曇天

バッド・ジーニアス 危険な天才たちの曇天のレビュー・感想・評価

4.5
この映画観ているだけで愉快痛快。とちょっとのえぐみや胸糞?もあり、観た後でもタイのことを知ればより愉快痛快になれる映画。唯一バーツの価値くらいは知っておけば、台詞で飛び交う値段の価値が分かって良いと思います。僕は知らなかったので今えらく悔しいです。

タイは賄賂大国だそうで。タイの警察はちょっとした交通違反から死亡事故まで何でも金でもみ消せることで有名。教育にも賄賂が広まっていて、勉強ができない生徒から教師は賄賂を受け取って成績を融通する。劇中でも奨学生で入学する際、授業料を免除するための賄賂が渡されるという意味がわからない描写がある。支払う側もそれを普通だと思ってる。これが文化として根づいて常態的に金で成績が買えるなら、学校は他の真っ当な学校から下に見られるし、権威も試験の価値もないのと同じ。
そこで勉強ができる生徒が一言、

「先生、教師が賄賂ビジネスで儲けて、何で生徒がカンニングビジネスで儲けちゃいけないんですか?」

(尚「だって金がすべてじゃないですかぁ」と続く。※劇中台詞ではありません)
この発想が愉快痛快で、一理のっかることで応援したくなるのだ。ただの犯罪エンタメではなく社会批判・カウンターになってくる。

ラストシーンの展開は『賄賂文化に真っ向からNOを突きつけ、告発する』内容だった。賄賂に接触した人がそれに対して何をすべきかを示していた。一見オチとして弱い気がしたが後に納得。

金持ちの子供グレースと貧乏な家の子供リンは対照的だけど、友情関係に毒は感じず観れる。リンは金、グレースは成績と演劇の権利を得てWINWINだしケイパーものとして楽しいんだけど、リンの方が金を得ても不運で幸せになれず気づけばグレースの地位が守られるだけで、観ていて何だこれとだんだん気持が沈んでいく。何よりカンニングをしていたことの悪影響が法的にではなく別の形で示される展開にはちょっと引くぐらい驚いた。脚本がやれるとこまでやったれと意欲的。台詞回しも光ってた。

僕は専ら主人公リンの成長を描く青春映画として観ていました。基本的にカンニング送り主は彼女一人で重圧ほぼ全部かかってきて基本汗だく。その分成功した時の仲間のハンドシグナルなどを見せられると快感もひとしお。バンクみたいな秀才ライバル男子が出てきた途端ちょっかい出したり、光あり影ありで甘酸っぱさの加減も上手く楽しかった。主要キャストが演技経験が浅い無名俳優。最初凄い顔の子だなと思ってると恰好次第でだんだん可愛く見えてくる主役の子は成程モデルさんね…名前は覚えられそうにない。70年代のハリウッドスパイ映画を参考にしたという監督はナタウッド・プーンピリアさんは注目しとこう。
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