カトキチ

キラー・インサイド・ミーのカトキチのレビュー・感想・評価

キラー・インサイド・ミー(2010年製作の映画)
5.0
幼少の頃から善人づらして過ごしてきたサイコパスでシリアルキラーな男が、その暴力衝動をおさえられずに、人を計画的に殺して殺して殺しまくるというジム・トンプソン原作『内なる殺人者』をマイケル・ウィンターボトムが映像化した作品。

砂が舞い上がるほど乾き切った風土、保安官、酒、葉巻、娼婦、拳銃という、いわゆるひとつの「テキサスい」映画なわけだが、監督のセンスで結構あっさりとした仕上がりになっていて、脂っこい見た目とは裏腹にペロッと平らげることができる。名付けるなら英国式さっぱりテキサス風味。

基本的に一歩引いた視点で殺しのシーンが撮られているので、臨場感こそないが、客観視してるかのような冷たさが残り、妙に怖かったりする。映像にはできないだろうと思った原作の禅問答みたいなのは丸々カットしてるので、そこも含めて脚色はかなり潔い。

毎回毎回監督が代わったんじゃないかと思うくらい作風が変わるウィンターボトムだが、その中でもかなり良作の部類。往年のクラシック映画の風格すら漂う、野蛮で刺激的な一作だ。
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