カトキチ

ナイト・オン・ザ・プラネットのカトキチのレビュー・感想・評価

5.0
最高傑作とはいえないけど、ジャームッシュの中ではいちばん好きで、いちばん回数を観ている。いっときこの映画にハマりすぎて、毎日どれかのエピソードを観るという日が続いたくらいだった。

基本的にタクシーに乗り込んできたお客と運転手のささやかなやりとり。それをロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキを舞台に同時刻にそれぞれ展開していくオムニバス(時差があるので順番に進むが)。

と聞くと、かなり規模がデカそうに見えるがホントになんてことない話。タクシー運転手とお客の空間って独特で基本的に彼らは二度と会うことはない。その強制的に一期一会になってしまう瞬間の切り取り方がたまらない。ある種のおとぎ話のようにも見える。

映像としてもタクシーの車内がメインなんだけど、外の景色を並行に見せることで世界をドライブしてるような感覚になる。

故・淀川長治はこの映画に関して「ぼくはみんなと同じ場所、同じ世界にいることが好きなの。飛行機に乗っててたくさんの人が同じ時間に一緒に乗ってることがうれしいし、電車に乗ってても同じ。今こうしてあなたたち(おすぎやスタッフ含め)と一緒にいるでしょう。そうやってみんなと一緒にいることが好きなのね。その上でこの映画は“いま東京に誰がいるだろうか。ロンドンに誰がいるだろうか”ということを考えさせる、その着想がよかったの」と言っているが、まさにぼくもこの映画を観た時のワクワク感ってこれだよなと思った。

「ドライブ・マイ・カー」もこの映画を少しは参考にしてるのではないかと睨んでいる。

参考文献: 淀川長治・おすぎ「おしゃべりな映画館③」マドラ出版
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