足拭き猫

一筆の冬の足拭き猫のレビュー・感想・評価

一筆の冬(2023年製作の映画)
4.3
フィルマークスに追加されたので、2022年12月に書いたレビューをこちらに移動。

今後編集をするらしいので完成形ではないが、観る機会がありとても好きだったので。ちょいネタばれあり。

オープニングがフランスの有名な詩人(ボードレール?)の作品朗読と端麗な音楽で始まり、その後、緑の庭で男の子が鳥の亡骸を持って彷徨うのに何が始まるのだろうか?と期待が高まる。すごく不思議な家族でちょっと気味悪くもあるが、死の淵を覗いていてしまう青年が体験する、現実だか幻想だかわからない世界が丹精で美しく、夢の合間を漂うのに味わいがあった。

古式ゆかしき両親に反発する青年が、妹の不在から立ち直るべく明るい方へと行こうとするも、結局は死に足を絡めとられていく。でも家族と過ごした時間を体験して、最後は彼女のために生還しようとしたのではないか。
死を誘う帽子や電球を使った不吉の暗示、生命の循環の印であるモミの木や水、一筆の丸など随所に生死のメタファーが用いられているのがとても興味深く、一種の様式美も感じ、冒頭の墓場での家族の動きや最初のトランペット演奏する場面、ひなまつりのシーンなども妖しさに溢れていた(要するに好き)。
台風が来たらモロに波を被りそうな海辺の家や、昭和初期らしき日本家屋など、どこで見つけてきたのかというようなロケ場所も良かった。

監督が入れたいものを詰め込んでいるので物語や主題が分かりづらくなっている感もあるが、この先が楽しみな作品。