面白かった!!!
ベルリン国際映画祭Generation International Jury - Special Mention受賞・シアトル国際映画祭ラテンアメリカ部門受賞作品。
とても珍しいケチュア語が聞けます。
ペルーの山頂に住むアルパカを育てる牧羊民(?)の8歳の男の子が主人公。ペルーはワールドカップに出場なるか、と盛り上がっている時期。「岩と山」しかない山の上で暮らしながら、山の下の都会的生活にも強く関心を持つ彼は、自分のかわいがっているアルパカに「ロナルド」と名づけるほどのサッカーファン。街で落ちていた雑誌をすかさず拾い上げ、その雑誌にあるかっこいいヘアスタイルにロナルドをヘアカットするぐらい、<カッコイイ生活>に憧れている。彼の友達は、犬の「ランボー」とロナルドという、本当に何もない山岳で彼は毎日動物にサッカーのことを話しかけながら生活している。だが、その暮らしも、最近は工業化により脅かされ、住居は汚染されていき、大人たちはその暮らしに危機と、工場への怒りを抱えて生きている。
モダンな時代に生きる彼と、世代の違う大人たちと、先住民としての本当の誇りを失っていないのは、一体誰なのだろうか。
終始アルパカやら犬やら子供やらが出てきて癒されること間違いなし。先住民の生き方とリアルについて考えさせられること間違いなし。
###ネタバレ####
話は途中、サッカーを見るためにテレビのある街まで家族で降りていった時に起きた事件で急展開する。
なんと、彼らのライフラインそのものであるアルパカが、数頭殺されていたのだ!そして、フェリシアノ(主人公の少年)のロナルドのいるアルパカの群れも行方不明に・・・!
この子達が死んだらどうやって生きていけばいいのと泣き叫ぶ彼らをみれば、事の重要性がわかるのだが、話はそれだけでは済まない。
先住民の大人たちは、今まで溜めてきている憎しみの矛先を、先住民族vsペルー(実際は、山を汚染し始めている炭鉱会社との戦いだったらしい)との絶え間ない争いに向ける。
実際のところはわからないのだが、私には、大人たちは常に喧嘩の種を探しているように見えた。
ロナルドを探したいフェリシアノを無視し、警察に行ったり、デモを行ったりと、肝心のアルパカを見つけるという重要課題を完全にスルーし、この機会を逃さんとばかりに争いのネタにする大人たち。もうむしろ、アルパカのことなど忘れているのではないだろうか・・・。
このシーンから、先住民族とペルー(炭鉱会社)の軋轢は今でも絶え間なく続いており、彼らは常に憎悪と共に生きてきたことが窺える。
そんな怒りに燃えてデモを激化させ暴力にまで発展しそうになる程熱く戦い始める大人たちを横目に、
賢いフェリシアノはさっさとアルパカを見つけることにする。先住民のやり方で。
彼のご先祖がずっと昔から行ってきた、山の神様にお伺いするという先住民の方法で。
祈るとすぐに山神さまは現れ、直ちにアルパカたちを見つけてロナルドは帰ってきた。さっさとアクションを起こしアルパカを見つけるフェリシアーノの横で、アルパカなんか忘れ去っている大人たちの大げんか。
問題は、解決した、はず、だよ・・・ね?
アルパカにロナルドって名付けてるフェリシアーノと、
先住民の誇りのために多分争っている大人たち。
どっちが先住民<らしく>生きているのか。
一体、彼らには何が一番大切なのか。
今に生きる子供だから、先住民の知恵を忘れているなんてことが言えるのか。そんな不思議。
現代化していく先住民たちの生活。
現代化と伝統的生活のジレンマによるとめどない争いは日常茶飯事。
「いつ終わるんだ」とうんざり嘆くお婆さんの横で、
デモ隊を完全スルーするフェリシアーノ。
そんな不安定極まりないような生活の中、
それでも、山にはまだまだ神様がいらっしゃるし、
新しい世代も
決してその神様と繋がる方法を忘れていない。
その智慧はきちんと受け継がれている。
新しい先住民世代は、
きっと無駄な争いなんかにエネルギーを注がず、
きっとお互いをリスペクトし
きっと新しい生き方を見つけていくはず。
最後、そんな希望が見える作品。