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ルート29のryoのネタバレレビュー・内容・結末

ルート29(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

まさにマジックリアリズム。

導入シーンの横移動ショットの流れの気持ちよさ。そこからトンボとハルに繋がってくると、普段自分が世界に感じているものと異なるポップでシュールなリズム全開で置いていかれそうになる序盤。
3人の隊列歩行の規則的なリズムと、追いつけないじぃじのカヌーの速さが印象的でとても良かった。

そして中盤。自分にとってはトンボの姉河合青葉さんがこの映画に入り込む橋渡し役をしてくれた。
世界に無数にある筈のそれぞれの世界でそれぞれのリズムで生きたくても生きられない人。そのリズムの違いを美しいものだと感じながらも、同時にそのリズムの違いを恐れにも感じてしまう。
姉のこの感覚によって、この映画の世界と自分の世界との繋がりをやっとここで見つけられたように思う。
明るいピアノ側と、暗いダイニング側の切り返し。ピアノの椅子に足をあげて座るショット。河合青葉さんの温かみと冷たさが同居する存在感も含め、このシーンはとても良かった。


死の匂いやリアルな世界とは別の世界を時折意図的に漂わせながら、でもそれが形作ろうとする固定的な物語世界に決して取り込まれてしまう事のないハルのそのままな感じ。ただその浮いている感じは決して物語世界やそこに含まれる様々な世界と対立する訳でなく、リズムを崩しながらも力強く物語を前に進めていく様子に心地良くなってくる。不思議な化学反応。
前作に続いてハル役大沢一菜さんの固有のリズム、周囲とのアンバランスな調和にグッとくる。
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