戦争、しかもナチスが絡むと話が重そうという先入観があって、ちょっと腰が引けてたんですが、前々から見たいなとは思ってたので、見てみました。
面白かったです。
前に見た、エルンスト・ルビッチ監督の「生きるべきか死ぬべきか」も、ゲシュタポ対地下組織の構図でしたが、あちらはコメディ、本作はサスペンス。
死刑執行人こと、ベーメン・メーレン保護領副総統ラインハルト・ハイドリヒが暗殺されるところから、物語は始まります…っていうのが、凄いですね。
凡人の私からすると、暗殺の瞬間をクライマックスに持ってくる方が自然だと思ってしまうんですが、本作は、暗殺の場面はおろか、死体や血すら映しません。
ハイドリヒ暗殺のニュースが、プラハのどこかの劇場で、観客の中をさざなみのように広がり、それがやがて喝采に変わっていくシーンがあるだけです。
この劇場のシーンは、その後の「暗殺者を巡るプラハ市民とゲシュタポの対立」という展開を端的に表した、秀逸なシーンだったなと思います。
暗殺犯を見つけられないゲシュタポは、無関係の市民の中から人質を取り、暗殺犯が捕らえられなければ、人質を順に殺していくと、市民を脅迫します。
この段階で、「①プラハにとっての英雄である暗殺犯を逮捕させずに、②人質を解放させる」という、本作におけるミッションが明確になり、その後の両者の攻防も、より激しくなっていきます。
この攻防は、けっこう頭脳的かつ大がかりで見ごたえがあり、特に、市民側が勝ち筋を見つけてからは、畳み掛けるような展開で、目が離せませんでした。
市民の一勝一分けみたいな感じで、カタルシスも苦さも強く残す終幕は絶妙。
巧みな脚本で魅せる本作は、間違いなく娯楽作品だと思いますが、最後に流れる「NOT THE END」の文字が、観客を娯楽に浸るのを許していないようにも思えて、残る余韻は複雑です。
徹頭徹尾、良くできた映画でした。
「生きるべきか死ぬべきか」でも感じたことですが、戦時中にこういう題材で、反戦のメッセージはしっかり込めつつ娯楽として通用する映画を作れる往時の映画人の力には、感服します。
今、こういう映画を作れるとしたら、誰なんですかねぇ。