このレビューはネタバレを含みます
弾けるポップロックキャンディのごとくカラフルな感情を炸裂して存在感を放つアニーから目が離せません。ジェットコースターのように乱高下を繰り広げながら衝突する獰猛さと勇敢さと孤独。
監督の前作『レッド・ロケット』が大傑作だったので、やや物足りなさはあるものの、アニーの魅力は強烈でした。
一生懸命に幸せを掴もうと生きてきた彼女の前に現れた「王子」と彼の取り巻きも個性的で、それぞれ最低で最高なのが良い。最低で最高はショーン・ベイカーの真骨頂だと思います。それは人間の多面性を楽しく、美しく、そして哀しく描けているからに他なりません。
激情から突然訪れる静寂のラスト。その行為でしか相手を喜ばせる術を知らないアニーの精一杯のコミュニケーションが悲痛でした。
「愛」だと信じたものに裏切られ、自分の価値も幸せの意味も見失って自暴自棄になった彼女に寄り添い続けたイゴールなら、きっと彼女の「性愛」と「情愛」を切り分けて受け止めてあげられるのではないかという期待が悲しい結末にさす一縷の光です。