いずみたつや

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWNのいずみたつやのネタバレレビュー・内容・結末

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ボブ・ディランの歌の素晴らしさを再確認させてくれる映画です。

ウディ・ガスリーの前で披露する「Song to Woody」を聴いた瞬間に思わず落涙。「I Was Young When I Left Home」を初めて聴いたのは上京した頃で、郷愁と孤独の夜に何度も寄り添ってくれた大切な曲だったので、彼が成功を掴むキッカケの曲として採用されていることが嬉しくなりました。

変化を受け入れ、新しい刺激を探究し続ける存在としてボブ・ディランを描く本作。

自分の信念を貫き続けることこそがロック!などと分かったことを言いたくなってしまいますが、ボブ・ディランにとってはロックだフォークだの議論すら息苦しく、彼はただ「今という地点」から心の内を晒すだけの流れ者であり、そこがかっこよさなのだと改めて思い知らされます。

フォーク好きとしては、クライマックスでフォークやピート・シーガーが保守的な音楽という分かりやすい「悪役」の立ち位置を任されていて心苦しいところはありますが、時代は変わる。

偉大な師も愛する人も、誰も彼の歩みを止められません。行き先は風だけが知っている。