「ここ10年でいちばん怖い映画」というのは「観たら吐く」とか「各国で上映禁止」みたいなボジョレ・ヌーボー的ジャーゴンだからともかく、世界的なY2Kリバイバルの一環なのか、90年代末~00年代頭に流行したサイコホラーを装っている。海の向こうではフィンチャーやシャマランが気を吐き、我が国では清水崇や中田秀夫がJホラーを爆誕させた。佐藤敦紀の大袈裟な予告編が劇場を席巻していた「あの頃」。『CURE』がつくづく偉大だったのは、現実に人間を洗脳するプロセスがあるとしたらこんな感じでは、という実例をキチンと演出していたことだ。執拗に繰り返される言葉攻め。ライターの火を用いる魔術的工程。「虐殺の文法」を作り出し、映画内リアリティを確保していたからあんなに恐ろしかったのであって、今作にはハッタリしかない。ジャンプスケアで驚かすとか良識ある映画人は絶対やらないんだよ。謎めいた猟奇殺人の犯人が白塗りしたニコケイってそれはもうギャグじゃん。いくらシリアスぶっても台無しじゃん。間宮が竹中直人だったら駄目じゃん。理に落ちないからこそ神秘だった殺人考察が単なるお人形の仕業だと判明する底抜け感は完全に『アナザヘブン』。そこ真似しなくても……。主題歌はT. RexじゃなくてLUNA SEA。