TAK44マグナム

暗闇にベルが鳴るのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

暗闇にベルが鳴る(1974年製作の映画)
3.6
イタ電魔は殺人鬼!


2018年、平成最後のクリスマスも過ぎましたね。
もう大晦日も目の前ですよ。
そんな微妙な時期に、忘れていたかのようにクリスマスが舞台のスリラーをお届けしましょう。
「君は薔薇より美しい」と口説かれたのかどうか知りませんが、布施明の元嫁であったオリビア・ハッセーがまだまだアイドル女優だった頃に主演した「暗闇にベルが鳴る」!
アイドル女優の登竜門と言えば怖い映画と国際的に相場は決まっているのです。
共演者は「スーパーマン」シリーズのマーゴット・キダーや、「燃えよドラゴン」のジョン・サクソン等。


まだ子供だった頃、テレビで観たら怖かった思い出があるんですよね。
そこまで残酷描写に特化したタイプではなく、怖さを助長させるサスペンスフルな演出が中々に巧み。
暗い余韻を残すラストの締めっぷりも嫌な汗がふきでるようです。
監督は「ポーキーズ」のボブ・クラーク。
この人はキャリアの出発点が多くのインディーズ出身者同様にホラー映画でして、ゾンビホラーの「死体と遊ぶな子供たち」や「デッド・オブ・ナイト」を監督しています。


クリスマスの大学女子寮。
年末ということで学生の大半は帰郷しており、残った数人がパーティを楽しんでいました。
そこへかかってくる変質者と思わしき者からの意味不明のいたずら電話。
学生たちは気にしないように努めますが、謎の変質者は寮内に侵入、帰り支度をしていたクレアを殺害します。
行方不明となったクレアを探す父親や寮母、そしてジェスやバーブたち。
折しも、女子中学生が公園で死体となって発見され、ようやく重い腰をあげた警察がクレア搜索といたずら電話の逆探知を開始します。
一安心するジェスたちでしたが、ジェスの恋人であるピーターがある事で不穏な態度をとるようになり、眠っているバーブに近づく怪しい影も・・・
再びかかってきた電話の逆探知が成功しますが、それは意外な場所からかかってきていたのです。
はたして、殺人鬼の魔手が迫る中、ジェスは惨劇から脱することが出来るのでしょうか・・・!


北米では有名な都市伝説が元ネタという事ですが、どこの国でも、この手の怖い話って喧伝されているイメージがありますね。
これは観ている側には最初から明示されるのでネタバレにはならないと思うので書きますが、要するに「殺人鬼は最初から寮内に潜伏している」というネタです。
ほら、日本の都市伝説にも同じようなのがありましたよね。
電話の件にしても、潜伏している件にしても。
よくよく考えれば、けっこうデカい声で電話しているので、同じ家(寮といっても普通の屋敷程度の大きさ)にいたら分かりそうなものなのですが(苦笑)、誰も気づかない(汗)
そんなおかしなところもあるにはあるのですが、真摯に作っているのが分かるので、とりあえずこちらも気づかないフリをして鑑賞するべきなのでしょう。

何となく懐かしさがこみあげる逆探知の場面や、死体が見下ろす先で父親が娘を探しに車に乗り込んでいるショットなど、ハラハラしたり、ゾワっとさせてくれる、これぞ正統派のスリラー。
どことなくヒッチコックやデパルマみたいな風味も感じさせます。

この映画の真骨頂は、終盤、たったひとりになったジェスの疑心暗鬼がもたらす展開の妙でありまして、そこに至るまでのミスリードの数々がボディブローのように効いてくる仕掛けになっています。
たんなるスラッシャーではなく、ミステリー要素が強い作品ですが、犯人探しというよりも、最後の最後に訪れる真の悲劇を冷たく味わうのが正解ではないでしょうか。

殺人鬼の正体そのものは置いておいて、「ビリー」や「アグネス」という名前が登場する多重人格的な電話の内容が恐ろしい。
しかし、この名前を持つ人物が登場するわけではないので、さっぱり訳がわからないのです。

本作には、ボブ・クラークが製作を務めた「ファイナル・デッドコール」(原題はオリジナル版もリメイク版も同じ「ブラッククリスマス」)というリメイク版も後年作られていますが(レビュー済み)、そちらはミステリー要素を薄め、単純なスラッシャーホラーになっているので見比べてみるのも一興かと。
そして、何よりもオリジナル版では最後まで不明であった「ビリー」や「アグネス」の正体が判明するので、本作を観てモヤモヤした方は、人肉クッキーも不味そうなリメイク版も合わせて鑑賞すると良いかと思います。
映画としての完成度は、現在でも一定の評価を得ているオリジナル版の方に軍配が上がるでしょうけれど、派手な残酷描写を楽しみたいゴアホラーのファンであるならばリメイク版一択でも良いかと。
どちらにしろ、ちょっとあり得ないシチュエーションが微笑ましいクリスマスホラーですね🎄