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スピーク・ノー・イーブル 異常な家族の708のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

今年5月に公開されたデンマーク&オランダの「胸騒ぎ」をブラムハウスがリメイク。

ミヒャエル・ハネケが「ファニーゲーム」をアメリカにて、完コピでセルフリメイクしたことを思い出しながら、この作品も完コピなんだろうと思っていたら、まったく違いました。オリジナルとは違う展開や演出がちょっとずつ出てきて、結末はオリジナルとは180度違ったものでした。アメリカ向けだとここまで丁寧に説明するような演出や、こういう明確な着地のラストじゃないと難しいのでしょう。

「胸騒ぎ」の嫌な余韻をガッツリ残すラストがかなり好きですが、今作のラストもこれはこれで嫌いじゃありません。「胸騒ぎ」のアイディアソースを使った別物と言ってもいいかもしれません。「胸騒ぎ」のほうが胸糞悪さとショック度は高め。デンマークですからね。北欧の闇。今作でオリジナル「胸騒ぎ」を知り、観てみようと思った人はぜひ。衝撃的です。

「胸騒ぎ」と比べると、父親がさらに家族において機能していないように思えました。「フレンチアルプスで起きたこと」と同質なダメな父親。ベンは自分の家族を守れないまま、何かとパディの言いなりになっていて、男社会においても弱者の位置づけなのがうかがえます。妻のルイーズが浮気をしてしまったのもどこか納得です。なんだかんだ言いながら、ベンは自分にはないパディのマチズモな部分に憧れていることがうかがえます。パディとベンのコントラストを使って、父権主義や家父長制のメリット&デメリットがうまく描かれてます。

最後にベンはパディにトドメを刺すかと思ったら何もせず。ルイーズもアグネスも必死で立ち向かい、幼いアントですら絶叫しながらパディの顔面をレンガで殴りまくったのに、ベンは結局逃げ腰なままでした。

すべてが終わって車でアントが神妙な表情を浮かべているのは、ベンのようなダメな父親の家族に引き取られることへの悲壮感や絶望感なんじゃないの?と思いました。

っていうか、アグネスは大事な人形を安易に失くしすぎなんだよ。ちゃんとして。
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