このレビューはネタバレを含みます
「リトル・ジョー」「クラブゼロ」を観て、ジェシカ・ハウスナー作品が観たくなり、配信にはないこちらを借りてきました。
難病のため全身麻痺で車椅子で生活を送るクリスティーヌ。ルルドの泉への巡礼のツアー中に奇跡が起きて麻痺がいきなり治り、立ち上がることができるようになるんだけど、そのことによって人間の本質がどんどん剥き出しになるのが興味深かったです。
そこまで信仰心がないクリスティーヌ本人は驚き、驚いた周りの人たちからチヤホヤされまくりで、一気に注目の的になるのですが、”ベスト巡礼賞” まで受賞(変な賞 w)して、どこか主人公気取りになっていき、「仕事がしたい」「恋がしたい」と堰き止めていた欲が次々と出てきて、他の巡礼者たちの気持ちを考えずに発言。
ツアー参加者たちの多くはクリスティーヌを祝福するというよりも、「本当に奇跡なの?」「一時的なものじゃないの?」「なぜ彼女なの?」「もっと信仰心が篤い人が他にいるのに」という感じで、クリスティーヌに対する嫉妬や奇跡に対する疑念が露わになります。病気の娘を持つ信仰心の篤いガレ夫人が、回復したクリスティーヌを羨むように見つめるシーンは気まずさ満点。
レア・セドゥ演じるボランティアのマリアのどこか気がそぞろでやる気のない感じ、司祭の巡礼者に対するちょっと偉そうな応対など、それぞれの綺麗事じゃない人間臭さがちょくちょく顔を覗かせてます。
ラストで意中のイケメン男性とダンスをしているクリスティーヌ。「大丈夫なの?」という視線が多々ある中で転倒したとき、「それ見たことか」「やっぱりね」という空気感に包まれます。そして、男性は面倒臭そうな素振り。これが人としての本音なんだろうなと、妙に納得できてしまいました。戒めを盛り込んだ童話のようなオチ。