このレビューはネタバレを含みます
ジェシカ・ハウスナー→オーストリアからの流れで観ました。
ウクライナからオーストリアへ単身で出稼ぎに行くシングルマザーの物語と、オーストリアからウクライナへ義父と車で仕事の旅回りをする無職青年の物語。このふたつの物語がまったく交わらないまま、並行して交互に映し出されます。どちらも貧困や生活困窮が軸になってます。
自分的にはかなりツボでした。画づくりが秀逸です。ミヒャエル・ハネケに近いものを感じます。起伏がないし山場があるわけでもなく、物語が淡々と進行するものの、妙に気になって会話に集中してしまいました。
働くことや定職につくことって大変だし、生きるって大変だなぁと。シングルマザーも介護施設での仕事を見つけて働いているものの、面倒な人間関係に巻き込まれているし、青年も変態で女好きな義父に振り回されまくり。ヘヴィな題材を深刻にならないタッチでシュールに描いているから、決して重くありません。背中合わせでずーっと漂っている死の匂い。ウクライナの廃れた町並みや貧民はつくりものではなく、リアルでドキュメンタリーっぽい。
チャットレディや義父の女の扱い方が男性優位で、モノ扱いで消費するような描き方をしているんだけど、ウルリヒ・ザイドル監督が妻のヴェロニカ・フランツと脚本を手がけてます。こういう変態的なものを夫婦で手がけられるってなんか凄い。
調べたらヴェロニカ・フランツって、「ロッジ 白い惨劇」「グッドナイト・マミー」や2025年に公開の「デビルズ・バス」の監督&脚本を手がけている人だったんですね。