トシオ88

五瓣の椿のトシオ88のレビュー・感想・評価

五瓣の椿(1964年製作の映画)
3.9
山本周五郎の名作を、野村芳太郎監督、岩下志麻主演で描く昭和39年作品。その後も幾度となく舞台、そしてテレビドラマとして描かれた復讐譚。

主役おしの役は若き岩下志麻。未来の松竹の看板を背負い、左幸子、伊藤雄之助、西村晃、岡田英次他錚々たる名優と渡り合う彼女の鬼気迫る、しかし美しい演技。その演技を支える松竹の美術。情緒あふれる江戸の街。紅蓮の焔に焼かれるおしのの生家。血のように赤い夕焼け空。令和の時代に失われてしまった映画美術が堪能できる。そして物悲しい芥川也寸志の名伴奏。琴の音が染みる。

復讐の長い道のりを終えて奉行所牢に入る岩下志麻。奉行所同心青木千之助役の加藤剛との、少しだけの心の交流の後の哀しい結末には思わず涙した😢。当時の大作の上映形式に倣い、二部構成の3時間近い長編だが、濃密で質の高い、古き良き邦画のパワーに魅入られる。
ラスト、おしのの父役の加藤嘉が語った、真っ赤な椿の花が数知れず落花する池の漆黒の水面が、また本作物語の無常感を際立たせる🎬
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