Eike

Strange Darling(原題)のEikeのレビュー・感想・評価

Strange Darling(原題)(2023年製作の映画)
3.3
これぞインディー系ジャンル作。
地味で知名度の低いキャストで作られた低予算作だが、最近ではちょっと珍しい位にB級アメリカ映画のエッセンスを感じさせてくれる作品。
かつてのアメリカ映画はこのような個性的な低予算作がたくさんあった気がする。
その意味で少しうれしくなった。

本作はサイコサスペンスのバリエーション作であるが、構成に特色があるのでできるだけ情報はセーブして鑑賞するのが得策。
できれば予告も見ない方がいいと思う。

作品のコピーは"Love Hurts."「愛は痛い。」で正にその通りの血塗れの展開が待ち受けている。
面白いのは本編が全部で6章(+エピローグ)に分かれていてその順序がシャッフルされている点。
その為、いきなりクライマックスといった雰囲気で始まる冒頭を見て受ける印象が前後して展開するにしたがって、全く別の真相(らしきもの)を示唆したりするのが中々に新鮮。
ぼーっと見ていると混乱するかもしれないが、それも作り手側の狙いだろう。
その雰囲気はいかにも映画オタクが作った匂いが強いのだが主演の二人の熱演もあり、鼻に付くような作品にはならずに済んでいる。
かなりタランティーノ風の味付けを感じるのだがエンタメ要素を犠牲にするようなことにはなっていないので最後まで楽しんで見ることが出来た。

エピローグまで手を抜かずに練られていて最後に「もしかして…本当は…」ということでリアルなサイコスリラーから微妙に逸脱した物語だったのかもしれないと思わせる辺りも中々にユニークだった。
その点でホラーファンにもオススメ。

面白いのは製作と撮影に噛んでいるのがジョバンニ・リビシである点。
スピルバーグの「プライベート・ライアン」やJ・キャメロンの「アバター」などでも知られる個性派のバイ・プレイヤーの彼にとって本作は撮影監督デビュー作なのだ。
役者として引退した訳ではないらしいが本作では色調やアングルにこだわりを感じさせるシーンも多く、サイコスリラーらしさの構築の要因となっている。ちょっとデ・パルマ♥な雰囲気も嬉しい。
演出ではなく撮影への進出は役者からは珍しい気がする。

アメリカでは観客・批評家からの受けも良かった様なので脚本・監督のJT・モナ―氏の名前は覚えておいてもいいかも。
Eike

Eike