垂直落下式サミング

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.5
レイザーラモンRGのあるある言いたいネタで、「リドリースコット監督はラッセルクロウに頼りがち」というフレーズがあって、若い頃それがずっと印象に残っていた。あらびき団だったかしら?なんか、深夜でやってたノリだった気がする。
その時は、なんとなくそういうもんなんだなと思って、同じ俳優と仕事したいタイプの映画監督さんなのねってぐらいの印象だったけれど、そこそこ大人になり自分で映画みていくうちに、「リドスコって俳優の演技なんかハナから信用してなくないか?」と認識が変わっていった。
意外と…というか、ゴリゴリにヴィジュアル先行型の作家さんだと思う。コロッセウムの剣闘士を題材にして映画を撮るなら、古代ローマ人っぽい顔で、厳つい身体付きをしてるやつが欲しいのであって、それ以上はあんま求めてなさそう。そんで独自の演技論とか持ち出してこずに、ゴチャゴチャ言わず指示だけ聞いくれる奴が好きそう。
本作も、映え重視の映像派としての腕を遺憾なく発揮。コロッセオは、水を入れることで海戦も再現できたのは知識として知っていたけれど、これを金をかけたスペクタクル映像として再現したのはみたことなかったから、大満足でした。
「弓を射たのは俺だ!」は「俺がスパルタカスだ!」へのオマージュとみた。2024年からキューブリックにラブコールをおくる87才。後継者扱いされなかったのが、よほど悔しかったのね。俗っぽいおじいちゃんで安心する。
例年と比べて映画に割ける時間は減った。2024年の後半は、ほとんど映画館に足を運べなかったが、そんななかエイリアンとグラディエーターのリドスコ印を2作品もみれたことに驚いている。
そして、ここでも、また出てくるロムルスという象徴。リドリー・スコットの宇宙では、血を分けた兄弟は、互いの存在を許せずに憎しみあうという宿命を背負うようです。
おはなしとしては、オーソドックスな貴種流離譚をなぞっており、身分を偽った正統なる血統を持つものが、悪政をしく皇帝と裏で暗躍する野心家を討つ!というミッションを背負うというもの。
続編という体裁をとる以上は仕方ないんだろうけど、やっぱ当事者が生きてる程度の中途半端な時間経過なのは気になった。
前作のコンモドゥスに継ぐ悪の皇帝と言えばカラカラ皇帝なんでしょうけれども、コイツが失脚してからも言うて国政はダラダラ続いたんだから、思いきってマキシマスの勇気ある戦いから100年後…!とかにして、もうローマが取り返しつかないくらいダメんなってからの世界もみせてほしかったな。
昨今、ポピュリズムだの反知性主義だのと、不届きな輩があちらこちらで大暴れし、賢い人たちはずいぶんと忙しい思いをされたであろうから、シャバい愚民でいらっしゃる皆さんもいっちょ史劇から学んでいきましょうよってことなんでしょうか?
西洋知識人の誇りであり、今日の人類社会が理想とすべきものでもある議会民主制の対立構造として出てくるのが、「パンとサーカス」ってやつらしいです。冥土の土産のサンドウィッチからは、はみ出た臓物のにおいがするようですが…。
まあ、古代ローマさんも、ずるずると衰退の一途をたどり、もうダメだな…となってからも、しぶとく都市国家であり続けた息の長さがスゴいところではあったりします。