Mikiyoshi1986

チャンスのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

チャンス(1979年製作の映画)
4.3
7月24日は54歳で夭逝した天才喜劇俳優ピーター・セラーズの命日。
生きていれば今年で92歳。

「ハロルドとモード」や「さらば冬のかもめ」などを手掛けたハル・アシュビーが監督し、
ピーター・セラーズの実質的な遺作となった本作「Being There」は、まさに彼の最期を有終の美で飾る代表作となりました。

子どもの頃から外界との接触を断たれ、豪邸の庭師としてひっそり働いてきた初老チャンス。
純粋な心を持ちながらも知能は極めて低く、読み書きすらできず、唯一彼と世界を繋いでいるのはテレビだけ。
そんな彼の御主人が亡くなったことで退去を命ぜられ、初めて外の世界に触れていきます。

「空っぽ」であるはずの庭師チャンスが周りの人たちから都合の良い様に解釈され、偉人チャンシー・ガーディナーに祭り上げられてゆく異様な可笑しさ。
あらゆる虚飾を取り払い、実は我々こそが「空っぽ」であることを痛烈な皮肉を交えて描いた傑作コメディ。

ピーターの朴訥な名演技は言うまでもなく、静謐さの中に並々ならぬ笑いへのポテンシャルを感じさせてくれます。
シャーリー・マクレーンは相変わらず可愛いし、名優メルヴィン・ダグラスの達観した富豪ぶりも言うことなし。

キューブリック「Dr.STRANGELOVE」で一人三役の名演技をこなしたピーターが、
同じくキューブリック「2001 A Space Odyssey」のファーストコンタクトへと繋がるオマージュはとても粋な演出になっています。
エンディング及びエンドロールも大好き。
Mikiyoshi1986

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