みかんぼうや

ファーゴのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ファーゴ(1996年製作の映画)
3.9
【クセのある登場人物たちによる“緊張感”よりも “抜け感”のあるシニカルクライムサスペンス】

むむむ、、、思ったよりフィルマの点数低めですね。

何年も前から見よう見ようと思いながらなぜか見ていなかった本作。同じくコーエン兄弟の「ノーカントリー」がストーリーも映画のテンポもあまり合わず評判ほどハマらなかったので、代表作と言われるこちらの作品からも自然と距離を置いていましたが、本作はかなり良かったです。連続殺人事件という展開激しめのストーリーを90分という短めの上映時間の中に凝縮しているが、退屈で無駄と感じるシーンがほぼ無いため、テンポが抜群で分かりやすく、あっという間に見終えてしまいました。

脚本も巧妙。バイオレンスな連続殺人事件であるはずなのに、その展開からか、クセが強い登場人物たちのせいなのか、キリキリとした緊張感が漂う、というよりは、少しふわっとしたどこか抜けたような気だるい雰囲気のクライムサスペンスに仕上がっており、これが本作が“コーエン兄弟のブラック・コメディ”と言われる所以か、と思わずにはいられませんでした。

物語は、とある自動車ディーラーの営業部長が自分の投資目的でお金が欲しいために妻を狂言誘拐を計画するも、ちょっとしたボタンの掛け違いから、当初は予想だにしない連続殺人事件に発展していくというもの。この展開自体は他の作品でも結構見られそうだが、先に書いたとおり、クセ強めな登場人物たちの“抜け感”がなんとも面白い。

個人的には、フランシス・マクドーマンド演じる妊娠中女性警官の、よく映画で見る“熱血警官”とは対照的な一見緊張感のない近所のおばちゃまのような雰囲気とセリフ回しがとても好き(しかし、当たり前だけど若い!)。彼女の「Oh~yah!」という相槌を聞くたびに、作品から緊張感が抜けていきます。加えて、ディーラーの営業部長ジェリー(ウィリアム・メイシー)のアタフタしまくる小物&自業自得感。その他の登場人もそれぞれ一筋縄ではいかない輩どもで見ているだけでなんとなくニヤニヤ顔に。

オープニングから「事実に基づいた話である」と始まるので、こんな興味深い事件があったのかと、鑑賞後に調べてみたところ、実際にこのような事件があったわけではなく、複数の事件のエッセンスを組み合わせて作ったフィクションなのですね。“事実に基づく”という解釈も人それぞれで、このあたりもコーエン兄弟のユーモアを感じさせます。

あまり肩肘張らずに見られるテンポの良いサスペンスなので、またふとした時に再鑑賞すること間違いなしの作品です。
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