このレビューはネタバレを含みます
こじらせ系、面倒くさい系の恋愛映画が好きなので鑑賞。予告編から好きそうと思ったけど、だいぶ思っている感じと違ったように思う。
本作はあまり恋愛映画に属さない気がした。最近恋愛映画の顔をして、個人の生き方、とりわけ女性の生き方が主題の映画が多い気がする。本作も、10年間の腐れ縁となる、カナコと長津田の関係を中心にその周りの人々に少しずつスポットを当てて描き出しながらも、その関係性によって個人個人がどう生きていくかという物語のように感じた。
なんとなくやろうとしていること(それぞれが周りの目や社会など気にせず自由に生きる。それが人と関わるなかで見えてくる)はわかるが、なんか上手くできていない、それが率直な感想だなと観ていてずっと思っていた。
同じシチュエーションの繰り返しや指輪、ヘルメット、鏡での対話、最後の突然のドアップ、ジェットコースターなどを使って関係性を描き、言葉だけに頼らずに他のもので描き出そうとしているのは伝わってくるけど、なんだかそれが上手く作用していないように感じた。指輪は割とわかりやすく物語に作用しているからいいとしてもそのほかはなぜそれをするのかよくわからなかった。ジャン・ユスターシュのセリフの多様とかからも映画好きなのわかるが、だからこそ映画的に上手くやろうとしている感が否めないなと感じてしまった。(最後も少し鼻についた)
でも、同じ人物であっても、関わる人によってその人のどの部分が強く出るかの違いがリアルタイムで観られるのは関係性を描く上でとても引き込まれたし、面白かった。この関係性だけに重きを置いてそれをどう描いていくかが主題となっていたらもっと面白かったのではと思った。
そこに現代女性の抱える生きづらさとか周りの常識とか、生き方の多様性とか、色々含めようとすると全部が中途半端に思えてしまった。しかも、こういった社会に孕む問題はみんなセリフで言われていたように思う。だからか、薄っぺらく感じて盛り込む必要性を感じなかった。それをやるならそれに対して感じる感情をより描くべきだと思う。
また、本作は様々な人間を描いている割には感情があまり見えてこないなと思った。どの登場人物も記号的だから、誰かに感情移入することもなかった。長津田は確かにクズなのかもしれないけど、人間的に見たら割といい奴だからそこまでクズでもないように見えた。自分のダメさを自覚してきても変わらない口だけ男という点ではクズなのかな。(結構みんなそうじゃないかな)カナコも結構思う通りに生きている面もあるから恋愛面での世間の声を聞いてしまって素直になれないというキャラクターも少し弱いなと思った。それぞれの人間の核が見え辛く、この人はこの関係上ではこの役割の人という印象が強かった。
それから、登場人物たちがみんな大きな変化というよりもちょっとした変化で終わっていて、だからこそ人との関係によって少し変わるくらいの物語として終わっていたように思う。現代をそのまま描くには弱いし関係性による変化も弱いから全体的に弱い感じだなと思った。
それから、推しである平井亜門くん。もっと見たかった。なんかいるか?という存在だったのが悲しかった。(後半全然出てこなかった...)