TAK44マグナム

ロング・キス・グッドナイトのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.8
暗殺者は主婦にもシェフにもなれる。


記憶喪失の主婦サマンサ。
優しいパートナーや愛娘との日々は幸せではあったが、やはり記憶を取り戻したい気持ちも強かった彼女は、自分の過去を知るために私立探偵のミッチを雇っていた。
ようやくミッチが足がかりをつかんだのも束の間、サマンサは謎の男の襲撃を受ける。
しかし、何故か戦闘のスキルを無意識に発揮したサマンサは、男を殺害してしまうのであった。
自分は一体何者なのか?
どうして命を狙われるのか?
サマンサはミッチと共に過去を探す旅にでる。
その先に恐るべき陰謀が待ち受けているとは知らずに・・・


北欧からやってきて、現在は中国で相変わらずアクション映画を撮っている不死鳥の男、レニー・ハーリン。
そんな暴れん坊監督が当時の奥さんであるジーナ・デイヴィスを主演に、伝説の超がつく大コケ大作「カットスロートアイランド」に続いて起死回生にと撮ったらまたもやコケたアクション大作。
でも今観ると、ザ・90年代のアクションって感じで普通に面白い。
それぞれの見せ場も凝っていて見応えがあるし、リアルさを荒唐無稽に変えたような「ジェイソンボーン」ライクなストーリーも単純ながら飽きさせません。

脚本料が400万ドルというのが話題になったのですが、書いたのは「ザ・プレデター」では監督業に精を出していたシェーン・ブラック。
しかしながら脚本の多くの部分はレニー・ハーリンが手を加えたらしく、やや強引で大雑把。
特に、主人公の娘ちゃんが持つ赤ん坊人形のくだりは物凄い御都合主義でビックリしました。
非常に重要なアイテムになるのですが、もう無理矢理に人形が登場します(苦笑)
それでも、どのアクションシークエンスも笑っちゃうほど豪快で、とにかく勢いがすごい。
なので、何だか分からないけれど格好いいし、迫力だけは一級品に感じます。
レニー・ハーリンの作品はその剛腕さこそが魅力だと思うので、本作は彼の監督作の中でも「ダイハード2」や「ディープブルー」、「クリフハンガー」と並ぶ快作と言えるでしょう。

その他、特筆すべき点は3つ。
まずは、キャラクター造形。
悪党側は少しアクが弱いのですが、サマンサ(チャーリー)とミッチのキャラクターが作品にピッタリとマッチ、定番の凸凹コンビ感が楽しいです。
しがない探偵稼業のミッチが見せる漢気も格好いいし、普通の主婦から覚醒して必殺の暗殺者チャーリーに変化するサマンサも、ジーナ・デイヴィスの好演も相まってシャープにキマッています。
チャーリーは髪がブロンドなので、さながらスーパーサイヤ人化ですよ(笑)
冷徹だけれども、サマンサとしての人格も消すことが出来ない。
後半の「殺し屋×母親」という難しい人物像を、ジーナ・デイヴィスは上手い具合に演じていると思います。
サミュエル・L・ジャクソンは、現在に通じる、いつものサミュエル・L・ジャクソンでした(苦笑)
あと、娘ちゃんが可愛かったな。

2つ目は、俳優自らが無茶なスタントをこなしているという点です。
香港映画じゃないんだから、スタントマン雇えばと思うのですが、監督のこだわりなのかジーナ・デイヴィスもサミュエル・L・ジャクソンもアクションの殆どに体を張る羽目になったとか。
相当、嫌だったらしいですけれど、そこはプロ。やるとなったら目一杯やるんですよね。
アイススケートしたり、横転したトレーラーでサーフィンしたり、窓をぶち破って10メートルぐらいダイブしたり。
かなり頭のおかしいアクションも要求されたかと思うのですが、それもあっての離婚劇だったのかな・・・?(汗)
(↑本作の完成後に離婚)

最後に3つ目ですが、これはレニー・ハーリンの代名詞ともいうべき「大爆発」です。
マイケル・ベイとならぶ爆破好き監督なので、いつかはすごいのがくるだろうと思っていたらきましたよ、最後の最後に大爆破が!
火だるまになった車が次から次へと爆弾のように降りそそぐ!
これは是非、音響が良い大きなスクリーンで体感してみたくなるぐらい破天荒!
やっぱり、アクション映画は爆発してナンボですよ。
ドカーン!と一発やってみよう!の精神が大切です!


それにしてもジーナ・デイヴィスについて少し調べたら、なんとまぁ!若い頃に「ナイトライダー」にゲスト出演していました。
何度か観たエピソードだったんですけれど、今の今までジーナ・デイヴィスが出演していたとは気がつかなんだ(汗)
DVDボックスあるので、今度確かめよう。


セル・ブルーレイにて