2025年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。レオノール・セライユ長編三作目。初長編『若い女』がカメラドール、長編二作目『Mother and Son』がコンペ選出とカンヌっ子だったセライユの新作がベルリンに登場ということで、これも新PDのおかげなのか…?物語は27歳の小学校教師見習いアリ青年の日常を追っている。冒頭では彼の授業実習が行われるが、子供の前で詩の小難しい話を始めて、子供は制御不能になり、監督官には呆れられてしまう。そして、アリはその場で倒れてしまった。もう無理!仕事辞める!と言って父親と衝突し、実家を飛び出して旧友たちの家を転々とし始める云々。27歳にしては子供っぽい人物として描かれており、遠い昔に亡くなった母親の影を未だに引きずっているような描写がなされている。眠れないから一緒に寝ようよ~と父親の寝室に入り込むシーンとか、幼稚過ぎてゾッとした。一昔前ならヴァンサン・マケーニュが演じてそうなキャラクターだが、十数年で同時代を生きる"情けない青年"像はここまで劣化するんか…と正直怖くなった。彼は旧友たちの家を訪れ、それぞれパートナーや子供がいたり、やりたい仕事を出来ていたり出来ていなかったりと境遇は様々あれど、アリの苦悩と近い部分もあって、アリは子供時代を懐かしむようにじゃれ合う。彼は数年前に恋人イレーヌが妊娠したのをきっかけに捨てた経験があるようで、友人たちには度々指摘されているが、最終的に彼女と向き合う勇気を得て、彼女に会いに行く。このシーンもイレーヌが結構甘々で彼の宙ぶらりんな態度を許してしまう。なにかアリの中に決定的な変化が見えないまま明るい未来が外部から訪れるという、アリの存在そのものに似たナイーブさが映画自体に感染していたように思える。