[中国、ワイヤーを使えば人間も空を飛べる] 70点
2025年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ヴィヴィアン・チュウ長編三作目。ファン・ディとティアン・ティアンは従姉妹だが、同じ家で姉妹のように育った。しかし、ティアンの父親がギャンブル中毒で借金まみれなのを家族全体でケアする関係で、この二人以外は険悪な雰囲気になりがちだった。それでも、ファンの母親が兄弟であるティアンの父親に"助けて"もらった過去があるせいで、彼を切り離すことが出来ず、そんな家族に嫌気が差したファンはティアンを置いて家を離れてしまった。5年が経ち、北京で女優を目指しながらスタントウーマンとして活動するファンの前にボロボロになったティアンが現れ、彼女を追いかける麻薬カルテルのメンバーも現れる云々。ティアンは頻繁に"空を飛びたい"と口にし、不吉の象徴であるカラスを自身と重ね合わせていて、それがスタントウーマンとして黒服で空を飛ぶファンの姿と重なるのが良い。人間もワイヤーを使えば空を飛べるのだ!という、ちと強引な気もするけどパワフルなメッセージだ。ティアンが追われているのは、やはりクズ父のせいなのだが、彼の借りを背負わされるにしてはやや不自然な設定も目立ち、特に冒頭に起因する齟齬が最後まで尾を引いてしまっている感じはする。ティアンを追う麻薬カルテルのメンバーも、どこか『ANORA』のへっぽこ三人組を思い出させつつ(エキストラに扮してファンを捜索するシーンは爆笑が起こっていた)、所属も目的もいまいちクリアにならないのは勿体ない。全体的に痒いとこに手が届かない感じとか、ティアン役のリウ・ハオツンが有名な若手女優であることを考えると、ハン・シュアイ『緑の夜』を思い出した。あと、スタントウーマンの仕事環境ってマジであんな感じなの?死亡事故が普通に起こりそうだけども…ちなみに、原題は"空を飛びたい女の子"だそうです。