ふぇりな

メアリー&マックスのふぇりなのレビュー・感想・評価

メアリー&マックス(2009年製作の映画)
3.9
⚠️精神疾患や自殺等の描写(結構多い)と、残酷な描写(ポップで軽め、人による)、津波の描写(少しだけ)もありますので、苦手な方は注意です!

ずっと気になっていました。ひとことで言えば、大人向けでちょっとブラックなストップモーションアニメ、という感じです。ブラックというのは、モノトーンのシーンが多いため文字通り暗いのもありますが、それ以上に内容がシビアで重い場面が多い、という意味です。実話を基にした作品ということは知らなかったので、とても驚きました…。ただ、暗いところばかりではないし、後味が悪い作品ではないなと思いました。

個人的な好き嫌いでいえば、好きなところがたくさんあるけれど、二回観るのはちょっときついかな~という感じでした。ストップモーションの絵柄(?)やキャラクターの癖が強く、内容も強烈なので、かなり好みがわかれると思います。
まず微妙だなと感じたのは、思っていた以上に(好みではないタイプの)下品な表現やセリフが多いなということと(笑)、脇役の登場人物の行動が理解できない(というか結構ひどい…)ところでした。まあ、世の中そういう人もいるとは思いますが、もうちょっと話し合おうよ…とか思ってしまいました。彼らのみならず主役の二人も突飛な行動はしますし、本人たちも自分たちが他と違うということに悩みを抱えているのですが、その点はこの作品のメッセージ性において重要な部分だと思うので、逆に良かったと思いました。

この作品で好きなところは、上記のメッセージ性と、声優陣の演技(トニ・コレットさんの声がきれいすぎてびっくりしました、落ち着く美しい声ですね…)、演出と音楽のチョイスでした。全体的に静かで陰鬱とした雰囲気でありながらも、場面によっては明るく情熱的で、メリハリがあって楽しかったです。
特に一番良かったメッセージ性については、展開やストーリーの効果もあってとても伝わってきましたし、大変心に残りました。作中のセリフである「LOVE YOURSELF FIRST」「完全な人間はいない」「不完全さも愛せるように」という言葉は、当たり前のことではありますが、それがどれほど難しく、そしてどうして大切なのかということを、痛烈に訴えていると思います。
また、「親は選べないが、友達は選ぶことができる」というセリフも、とても心に刺さりました。前半部分は、まさにメアリーが置かれた状況を表しており、それは世界中の家族に苦しめられている人に対しても発せられているのかなと思いました。また、後半部分の「友達を選ぶ」ということについては、個人的にはネガティブなイメージがあったのですが、この作品を観て考えが変わりました。選ぶということは、決してネガティブな意味だけではなく、「自分にあっている人が必ずいる」「嫌いな人と無理して接しなくてもいい」といったポジティブな意味合いもあるし、だからこそ「友達」になることができたのなら幸せで、大切にしなくてはならないのだなと実感しました。

自分の思いをまとめて、形にすること。そして、それを受け止めること。そのどちらも、必ずしも楽しいことだけではないし、思いがすれ違ったり、苦しくなって不安に陥ってしまうことだってあります。でも、どんな時でも、相手が自分を思って綴ってくれたものだということだけは変わらないし、だからこそ尊い友情も育まれるのだなと思いました。文通っていいなあなんて軽率に思ってしまいましたが、私もかつてやっていたことがあります。ただ、二人のように長くは続いていないので、寂しい気持ちになってしまいますが…。
長くなりましたが、友情と自分を愛することの大切さを感じるには、これ以上ない作品だなと思いました。人は選びますが、人によっては人生が変わるんじゃないかくらいの名作になると思います。苦しみを抱えたことがある人、そして強烈な世界観に飛び込んでみたい人には、おすすめの作品です。
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