しろくま兄サキス

世界最速のインディアンのしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

世界最速のインディアン(2005年製作の映画)
4.0
【バイク乗りなら誰でも抱く、根源的なひとつの疑問。「オレのバイクは、いったい何km/h出るんだ?」】
 一言で言えば東本昌平作、黄昏流星群って感じ。儂が常々思っていることと矛盾しているが、こりゃある意味、”変わらない”事を前提としたロードムービーなのだな。何が変わらないのか?それは実在のNZ人バート・マンローの性格であり、ボンヌヴィルに出場するという人生の目標であり、スピードという悪魔に魂を売り渡した18歳の心であったのだ。途中、いくつか挿まれるロマンス的エピソードは、たぶん商業的演出なんだろう。なぜなら、ああでもしないとただひたすら機械イジって、旅して、レースに出るなんて映画には、そういうのが好きなヘンタイども(含むワ儂)は喜ぶかもしれんが、女性客は誰一人足なんか運ばない。

 明け方、疾走するイメージの夢から覚めてガレージに赴き、愛車のエンジンに火を入れるくだり。うん、そうそう、そうなんだよ、その気持ち非常に良くわかる!もう冒頭のこのシーンで、儂らバイク乗りは、「ああ、コチラ側の映画だ」と認識するのだ。足の指の角質化した爪を、電動工具で削り取るなんてのは、まさに機械イジリ大好きバイク乗りの発想だよなwww。

 知的でノーブルで、しかも殺人鬼というハンニバル・レクター役とはうって変わって、誠実で一本気な万年青春じいさんバート・マンローを演じるアンソニー・ホプキンス。レクター教授とバートのときの”目”がこれほど違うとは。恐れ入る。

 儂も中高年にどっぷり片足突っ込んで、体のあちこちに変調をきたしているのがちょっぴり寂しいお年頃。そろそろ「壮快」でも購読しようかな、なんて思っていたのだが、人生の黄昏にあってなお、根源的なひとつの疑問を追求し続けるその行動力に勇気をもらう。少しだけ。