ベビーパウダー山崎

チャーリー・ウィルソンズ・ウォーのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.0
ソ連のアフガン侵攻に抵抗するためゲリラ組織に金を送る下院議員。アメリカからの大量の金と兵器によってソ連は撤退するが、その過激派の残党が後に911を引き起こすことになる。フィリップ・シーモア・ホフマンが因果は巡る「人間万事塞翁が馬」の小話をトム・ハンクスに聞かせる終盤のバルコニーのくだり、「これはマジな話ですよ」とホフマンに叱られたハンクスの複雑な表情を映しながらジェット機の音が聞こえてくる。もちろん未来の911の悲劇を示唆しているわけで、フィクションの強さ、映画とはこういうものだとマイク・ニコルズに教えられる。
歴史の要点を摘んでそれをまとめているだけのダイジェスト映画になっていないのがアーロン・ソーキンの凄さ。構成の妙。セリフの面白さ。中心のキャラクターは決してブレない、己の生き方を貫き通し周りの変化で話が転がっていく。一つ二つの出来事を同時に動かし、とにかく物語を停滞させない。脇役(側近)がえらく魅力的に見えるのもソーキン。得意のブチ切れ芝居を筆頭にホフマンのすべてが最高。ホフマンが死んでアメリカ映画も死んだ。