ベビーパウダー山崎

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのベビーパウダー山崎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ほんの少し、自分ではない誰かの気持ちに寄り添い、他人を救ったとしても、だからといってその「誠意」によって日々が好転するわけでもなく、平穏で平坦な暮らしが崩れたその先で、人生はまだまだ辛くて厳しい道程なのを身も心も理解したうえでの「それでもまだ、俺たちやれるんだよな!」でガッチリ握手して別れていく映画に魂が震わされる瞬間があるのは間違いなく、ああ、こういう表現に触れるために俺は映画を見続けているんだなあとか思ったりもして、見ているときより、しばらく経ってから、こういった感想を書いているときなど、ふと、ポール・ジアマッティのロンパリのような目玉が揺れるあの表情を思い出しては、なぜだか涙が溢れたりもするわけで、一人深夜に胸の奥からこみ上げ、たまらない気持ちになったりもする。
俺が敬愛するハル・アシュビー『真夜中の青春』『ハロルドとモード』『さらば冬のかもめ』を一本にまとめたような映画。画作りからゴリゴリの70年代フィルム。珍しくアレクサンダー・ペインがシナリオを書いていないが、物語(キャラクター)の芯は今までの作品と同じ、一貫している。「人は変わらない、だが、成長はする」。ペインぐらい物語をうまく映画にできれば、映画はまだまだ先はあるが、そういった作家はほとんどいない。
ジアマッティと似た者同士(どちらも鬱病)の学生を演じる役者が若い頃のマルコム・マクダウェルっぽくて最高。どこで見つけてきたのか知らないが、こいつの飄々とした感じがめちゃくちゃ良い。
セットを使わず、ロケで、本物の雪のなかじっくりと向き合うドラマ。シリアスでユーモラスで、もちろん孤独で、それでもどうにか生きていて。こういったのをもっと見せてくれ、全身に浴びさせてくれ。