A Useful Ghost(英題)を配信している動画配信サービス

『A Useful Ghost(英題)』の
動画配信サービス情報をご紹介!視聴する方法はある?

A Useful Ghost(英題)
動画配信は2025年10月時点の情報です。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
本ページには動画配信サービスのプロモーションが含まれています。
目次

A Useful Ghost(英題)が配信されているサービス一覧

『A Useful Ghost(英題)』が配信されているサービスは見つかりませんでした。

A Useful Ghost(英題)が配信されていないサービス一覧

Prime Video
U-NEXT
DMM TV
Rakuten TV
FOD
TELASA
Lemino
ABEMA
dアニメストア
Hulu
Netflix
WOWOWオンデマンド
アニメタイムズ
Roadstead
J:COM STREAM
TSUTAYA DISCAS

『A Useful Ghost(英題)』に投稿された感想・評価

[タイ、資本家/政治家と"便利な"マイノリティ] 90点

大傑作。2026年アカデミー国際長編映画賞タイ代表(最終リストには残らず)。ラッチャプーン・ブンバンチャーチョーク長編一作目。映画は同時に起こる二つの物語が入れ子状に語られる。咳の音と共にゴミを吐き出す掃除機を修理してもらおうと依頼した依頼人と修理に来た修理人の物語。そして、修理人が語る、ある"便利な"幽霊の物語である。舞台はどちらも現代タイで、そこでは工業化による粉塵汚染が激しく、誰もが咳をしていて、それによって死ぬ人すら出ている。後者の物語に登場するナットも、粉塵汚染が原因で流産の末に亡くなった。ナットの夫マーチは深く嘆き悲しみ、塞ぎ込んでいた。ある時、彼の母親が所有する工場でナットを見かけたマーチは追いかけていき、赤い掃除機にナットが憑依してと知る(初対面でノズルヘッドローリング乳首攻めしてたのには流石に爆笑した)。母親や父親方の親族は元々ナットへの当たりが強く、幽霊になれば尚更認めないと言い始めるが…云々。題名"便利な幽霊"というのは、彼らの権利を守る法律もない存在であるマイノリティとしての幽霊が、社会の中で生き延びるにはどうするか?という問いへの一つの解である。つまり、権力者にとって"便利な"存在になることで、少なくとも本人だけは問題なく生活することが出来るということだ(だから掃除機なんだろう、人間に従順で便利で同時に二台目は必要ない)。実際に、自身が亡くなった工場に取り憑いて生産工程を妨害する"悪い"幽霊や政治家に取り憑いて安眠を妨害する"悪い"幽霊が登場し、それらは"良い=便利な"幽霊とは違って駆除の対象であるとされる。ナットはこの駆除作戦に参加し、他の幽霊を利用することで"良い=便利な"幽霊としての地位を確立していく。あまりにもグロテスクだ。幽霊の駆除方法もグロテスクで、幽霊を呼び寄せるきっかけになった強い思いを抱く人物を夢への侵入で特定し、電気ショックで記憶を抹消することで幽霊を駆除するのだ。基本的に登場する多くの幽霊たちは粉塵汚染やデモ弾圧といった政治要因で亡くなっており、彼らが再び政治家や資本家たちの都合で存在を抹消されるのだけでもグロテスクすぎるのに、そこに自己中心的な理由で幽霊が積極的に参加するのはもっとグロテスクだ。生前に存在を認められてこなかったナットは、疑問を持ちながらもマーチすら差し置いて活動にのめり込んでいく。のめり込まされていく、の方が近いかもしれない。

終盤になると依頼人と修理人の物語にも動きが出始める。それによって映画は、ナットによって消されていった"便利ではない"幽霊たちの持つ戦いの記憶と接続される。私や他の皆が何のために戦ったか、もう誰も覚えていないだろうという悲痛な叫びに対して、記憶=幽霊を繋ぎとめるために"貴方のことを忘れない"と叫ぶ。死=忘却と戦う幽霊への生者の連帯が鮮やかに提示される。とはいえ、ナットとマーチの物語に良い決着が付くわけではないので、二つの物語の接合はあまり上手くいってなかったと思う。

ちなみに、途中までは掃除機が動いてナットの幻影が重なるという演出で描かれていたけど、終盤は掃除機が全く登場せずに常にナットを幻視しているように描かれていた。おいおい…とも思ったが、そもそもナットのシルエットが目の錯覚でラピュタのロボット兵くらい肩幅が広く腕が長く、カミーノアンくらい首が長く見えるという掃除機っぽいビジュなので、まぁ問題なしか。

追記
"便利な"存在というのは幽霊だけにとどまらず、夫の工場を引き継いで苦労の多かったであろうマーチの母親スマンの存在(彼女は訛りがあることを恥じている)や、マーチの長兄でゲイだったことで親族から蔑まれていたのに、オーストラリア人の夫と結婚して販路を拡大したことで"認められた"モスの存在も同じく"便利な"存在として描かれている。ただし、本筋からは逸れるので軽く触れる程度ではある。
4.5
【亡くなった妻は掃除機になって甦る】
動画版▼
https://m.youtube.com/watch?v=5zh7eU6wMwA&t=80s

第78回カンヌ国際映画祭の裏で開催されている批評家週間にてタレンツ・トーキョー出身監督ラチャプーン・ブンバンチャーチョークの『A Useful Ghost』がグランプリを受賞した。済東鉄腸さんが、5年ぐらい前に短編映画『赤いアニンシー; あるいはいまだに揺れるベルリンの壁をつま先で歩く』を軸に独占インタビュー記事「タイ、響き渡る本当の声~Interview with Ratchapoom Boonbunchachoke」を書いていたので興味あった監督だったのだが、まさかグランプリを獲るとは思っておらず興奮した。実際に映画を観ると滑稽な作品でありながらもコンセプトに手堅さを感じる一本であり、今後の活躍を期待したいものがあった。

とある工場で人が咳き込みながら死亡する。すると箱からガサガサ音がし、空気清浄機のようなものが踊り狂いながら語り掛けてくる。この工場ではしばしば労災で人が亡くなっているらしく、残留思念が家電や機材に憑依するのだ。ダクトのようなものからは「……シテ……コロしてくれ……」といった悲痛の叫びが聞こえてきて、銃で撃ってみたり、お坊さんを召喚して鎮圧にあたっている。

妻を粉塵中毒で失った男の前に赤い掃除機がやってくる。この掃除機は「妻」である。思わぬ再会に感極まり、ディープな肉体関係へと発展するが、家族はドン引きしており、この掃除機をどうにかしようとしている。彼女は「役に立とう」と奮闘していく中で、冷蔵庫に憑依した者と戦いを繰り広げたりする。

本作は社会システムによって殺される者のメカニズムを「家電に憑依し役立とうとする幽霊」といった形而上的アプローチで描いている。工場労働者は、歯車として会社の役に立とうとする。役に立たなければ代替はいくらでもいると切り捨てられるし、労災で死亡した者はこっそり始末される。幽霊となり転生した者は、生前、身体に染み付いた社会システムから逃れられず役に立とうと過剰に動き回る。そして役に立たない存在を倒そうと社会システムをコピーしたような振る舞いをする。本作は、そこに「悲劇を増長する場としての夢」といった概念を適用させる。掃除機が眠る者のマインドをスキャンすると、暴力や悲しみといった空間が広がっており、社会システムによる辛さが深層心理にまでおよんでいることを示唆しているのである。

だから一見、滑稽に思える本作から段々と痛ましき社会問題が見えてくるのだ。それでもって、ラストは驚くべきジャンル映画のスタイルでスカっと締める。これはA24に見つかって縮小再生産的な映画を作らせてはいけない。もっと凄い世界を魅せてくれそうだとラチャプーン・ブンバンチャーチョークへの期待が高まったのであった。