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男と女のkojikojiのレビュー・感想・評価

男と女(1966年製作の映画)
4.8
午前10時の映画祭 「男と女」
約50年ぶりのデジタル化された映画との再会は、全く違った印象だった。
もちろん初めて観たのは映画館だったが、決して映像が綺麗だった印象はない。音楽が素敵、詩的でセンスが違う等の印象は強かったが、こんな綺麗なシーンがあった記憶はない。デジタル化されたルルーシュのワンカット、ワンカットはすごく美しかった。
 特にアヌークエーメのカットはルルーシュがアヌークエーメの美しさを知り抜いた素晴らしいカットなっている。これは必見だ!

 霧笛が聞こえる。アヌーク・エーメが赤ずきんちゃんの話をしている。釣り人の間を帰る親子。夕暮れの海辺。フランシス・レイのあの音楽が静かにゆっくりと流れる。もうここからクロードルルーシュの世界へ誘われる。アヌーク・エーメのコート姿と髪をかきあげる仕草がたまらない。 
子供達の寄宿学校で出会った二人。パリへの車の中、子供達と日曜日を過ごす内に自然と恋心が芽生える。
男ジーン(ジャン=ルイ・トランティニャン)と女アンの出会いと別れ、そして。

レース後の食事会の席にアンから「愛してる」の電報が届く。「あんな美人がこんな電報を打つのか」とある意味戸惑いながら男(ジーン)は女がいるパリへ車を走らせる。
どんなふうに会おうか?
車を走らせながら、男は逡巡するが、このシーンは恋愛するものだけが味わう高揚感だ。この気持ちをすごく上手く描いていて、大好きなシーンだ。

二人は男が想像していた再会とは全く違ってストレートに抱き合う。それもまた可笑しい。そんなもんだ。現実は思ったようにはならない。
そして二人は結ばれる。
と思いきや、あと一捻り、いや二捻りがこの映画、この後待っている。
二人が結ばれたと思われた直後、女は「私の中では夫はまだ生きている」と言い出すのだ。このベッドの中で夫が生きているのだと女が自覚するシーンも上手い演出だ。
そして二人は別れるのだが、このまま終わるのか、ハッピーエンドで終わるのか、最後の「切り返し」が抜群だ。
見事としか言いようがない。もう一度この「切り返し」のシーンを楽しんで欲しい。素晴らしいから。
ルルーシュ、ほんとに上手い。

恋愛を掴み取るためには、ここ一番のところで絶対的なサプライズが必要だ。しかも、さりげなく。
by kojikoji

恋愛が成熟した二人の心のひだを、つぶやくようなフランス語が、まさに詩を読むように語られる。全編に貫かれるエモーションとポエジーは私を酔わせる。まさにラブストーリーの傑作。
 今年のベスト1に入れない訳にはいかない作品だ。

2023-540
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