つかれぐま

男と女のつかれぐまのレビュー・感想・評価

男と女(1966年製作の映画)
4.0
23/11/20@イオン多摩❹
#午前十時の映画祭

凛とした冬の空気感。
フランシス・レイのスコア。
アヌーク・エーメの美しさ。
モネのような構図が続くアート映画。

奇蹟的に本作と『アメリ』を同一館でハシゴできるという素晴らしい晩秋の日。どちらもスクリーンで観るのは初めて。

冬の海岸を背景に、
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  UN
 HOMME
  ET
  UNE
 FEMME
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こんな感じでタイトルが出て始まる。
そのオープニングのなんとカッコいいこと。冒頭から溜息。

美女を麗しく。
レーサーをカッコよく。
子供を可愛く。
海と空を広く。

全てを美しく撮ることに振り切った作品だ。ストーリーはその美しさに奉仕するようなもので「男と女」のジェンダー論などではなく、あくまで「ある男とある女」のコラージュ。メタ的に映画論を絡ませているのが面白い。

時代はヌーベルバーグ全盛期。
クロード・ルルーシュの映画には先鋭的な要素がないので、先駆者のゴダールたちとは一線を画していたそうだ。本作冒頭、ジャンの初登場シーンが妙にゴダール風のジャンプカットで、ほとんどパロディにすら見えるのはそういう確執から来ているのかも。

映画史的に見ればルルーシュの格付けは、ゴダールやトリフォーの一段下かもしれない。だがここまで「美しい」アート映画が撮れる監督は稀有だ。特に音楽とのマリアージュが素晴らしい。

ヌーベルバーグはいわゆる権威に背を向け続けたが、その頂点とも言えるカンヌ映画祭は、本作にパルム・ドールを与えている。