逃げるし恥だし役立たず

危険な情事の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

危険な情事(1987年製作の映画)
3.0
一夜の情事を楽しんだ既婚男性マイケル・ダグラス(ダン・ギャラガー)が其の相手グレン・クローズ(アレックス・フォレスト)から常軌を逸したストーカー行為を受ける姿を描いたサスペンス・スリラー作品。
マイケル・ダグラスが妻の留守中に知り合ったグレン・クローズと一夜のアバンチュール、マイケルは一夜限りの大人のお遊びと割り切っていたがグレンはそうではなかった、其れ以来マイケルをつけ回すつグレン、徐々に彼女の行動がエスカレートしていくと云う世の身に覚えのある男性達を恐怖に陥れた作品。エレベーターのシーンから始まり、住宅地の騒然とした家庭とスラムの殺伐したアパート、職場仲間とのボーリング大会と一人孤独に鑑賞する蝶々夫人の二人の対比、車中で聞くアレックスのテープやジェットコースター、ウサギの煮込み、バスタブの蛇口など、物語のテンポやリズムと云うより映像やカットから緊張感を醸し出す演出も見事だが、最後には妻の冷ややかな監視下で共同戦線を張らざるを得なくなる浅ましく哀れな男を演じたマイケル・ダグラスと狂的な執念で追い込みクライマックスには殆ど人間を捨てているグレン・クローズに尽きる。流石に最後は狙い過ぎて安っぽくなるのだが、前フリがあり何度もしつこく繰り返されて恐怖感を高めながらのイベント発生。まあ何が恐いのかって、理屈が通らない人間なのだから、怒らせたら何されるか分からなし、何時まで続くのか、此んな程度じゃ済まないっていう恐怖感の煽り方が上手い。
愛する家族があり順風な社会的地位があるマイケル、其れに反してグレンにはそうした安住に帰属できる基盤を持たない立場の上に、罪のないお腹の子供まで殺されてハッピーエンドになるのは、後味が悪くあまり納得出来ない。グレンが暴走し過ぎたため、グレンの一抹の哀しさを感じられず、男の身勝手な振る舞いから多くの人を犠牲にした其の罪の断罪意識が薄れて、結果ただのホラーに堕してしまった。ホラーと観るかサスペンスと観るかブラックコメディとして観るかだが、なんとなくスピルバーグ監督の『A.I.』を思い浮かべてしまう。
一番の被害者はウサギ…煮込むんならボクじゃなくてマイケル・ダグラスでしょ?せめて避妊はしないと…