彼氏と同じホテルチェーンに就職したものの、地方の遊園地へ配属されたヒロインが、個性的な仲間たちとの日々の仕事を通して成長していく姿が描いた人間ドラマ。小森陽一の人気小説「オズの世界」を映画化。
彼氏・小西俊郎(中村倫也)の勤める超一流ホテルチェーンに就職しながら系列の地方遊園地・グリーンランドへの配属という不本意な辞令を受けてしまった波平久瑠美(波瑠)。落胆する彼女は、数々の企画を成功させ魔法使いと称される一風変わったカリスマ上司・小塚慶彦(西島秀俊)や個性の強い従業員たちと共に働く。目覚ましい成果をあげたMVP社員は好きな部署に異動できると知り躍起になるが、やる事為す事が裏目に出てしまい、力不足を痛感する。小塚慶彦の叱咤を受けながら様々な失敗や成功を重ねていくうちに、少しずつ働くことの楽しさや遣り甲斐に気付いていく。やがて波平久瑠美は小塚慶彦に恋とも憧れともつかない思いを抱きだすが、或る日、小塚慶彦の秘密を知ってしまう…
永らく伊丹十三の席が空いてた御仕事エンターテイメントを、卒無くこなす職業監督さんが撮りましたって事では無かろうが、所詮テレビマンの監督なので、丁寧に撮っていても演出はベタベタで、斬新な画作りもない上に、筋立てに意外性は全く無く、大凡予想を裏切らない、万事都合の良いストーリー展開と科白は、或る意味では潔くて、其の辺が非常に良かった。
全体的に手堅くて、些か小ぢんまりしているとは云え、熊本に実在する遊園地グリーンランドが舞台のためテーマパーク好きには堪らないだろう。コミカルな導入部から細かなジャブを利かせつつ、小粋に描かれたエピソードに、ほろりとさせる場面もあり、笑いも含めて非常に巧く構成されて、気軽に楽しめて観易い映画になっている。
中村倫也(小西俊郎 役)が其処まで性悪になるのかと思うのだが、岡山天音(吉村豪太郎 役)や橋本愛(玉地弥生 役)や濱田マリ(南原カツヨ 役)たちの其々の役柄の性格付けが巧みで、脇役まで徹底してキャラ作りが上手い。まあ何が良いかって、西島秀俊が重たくない処で、波瑠が演じるヒロインの恋愛事情と、西島秀俊が演じる上司や従業員らとの関わりを通じた成長譚が、プロット上で有機的に絡み合い、教条的・啓蒙的な香りを一切感じさせず、感動や笑いを狙い過ぎていない処が逆に効果大で、とてもテンポの良い作品に仕上がっている。
判断の難しい映画で、映画としての出来よりも観客を劇場に呼ぶ力があるか如何かが気になるのだが、下手に色んな所に手を出してカジるだけじゃなくて、良い所を伸ばすのも大事だと思う。此れと云って強調出来る点も無く、何かを得られる訳でもなく、心を大きく揺さぶられる事も無いのだが、晴れ渡った空の下での素敵な人々との素晴らしい世界は、楽しくて爽やかで、何処か幸せになれるテーマパークの様な映画である。
物凄く高いレベルを目指している映画ではなく…まあ、こんな映画ばっかりになってしまったら困るのだが、もう少しこんな映画があっても良いのではないのかなぁとも思う…