Cisaraghi

沓掛時次郎のCisaraghiのネタバレレビュー・内容・結末

沓掛時次郎(1961年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

北関東方面の地方色がよく出ている映画ではないかと思う。

春子出てたとは!早く観ればよかった…。『破戒』にも出てたけど、共演部分はほんの少しだったので、初めて共演らしい共演をする春子と雷蔵さんを観たかも。感動…。春子と雷蔵さんは、あと『釈迦』に一緒に出てるだけみたい。春子と志村喬の出演によって映画への信頼感や格がぐっと上がる。志村喬もいわゆる雷蔵映画への助演は、これとあの謎の映画『かげろう絵図』だけ。

非常に型に嵌まった渡世人の義理人情話でベッタベタのベタなのはいいとしても、橋幸夫が時次郎の心情を切々と歌い上げるのはカンベンして欲しかった。どうしたって安くなる。せっかく大御所二人が格を上げてくれたのに相殺。商業的な理由で止むを得なかったのはわかるけども…。
 でも、全体としては不思議と古臭さをそこまで感じなかった。雷蔵さんがやると、どこかパロディっぽく感じられるせいかも。いかにキレイに型に嵌まっているかを見せるお芝居だからかな。あと、橋幸夫の唄と対照的なドラマチックに鳴り響く管弦楽曲の効果も大きい。門付け場面で歌っているのは雷蔵さん本人のようである。こういう唄が似合う民謡声だね。

道中ものでも、東海道・山陽道を行く映画がほとんどなのに対して、こちらは中仙道から内に入って緑深い山中を行く映画。水を張った棚田に沿って坂道を辿る雷蔵さんが珍しく、沓掛(今の中軽井沢)・熊谷・本庄・足利などの信州・北関東方面の地名が登場するのが新鮮。名前を偽る時には勝沼の地名が。そういえば時次郎の地味渋な装束はじめ、風俗にも質実な地方色が出ているように感じる。撮影は宮沢一夫さん。道理で。

チャンバラ音痴の私でも、雷蔵さんが多勢相手に立ち回るアクションシーンは面白く見られた。馬たちは大丈夫だったのかな?最後は明らかに某映画のパクリ。ちょっと捻りを入れたところが泣かせる。ロケーションはあちらにも負けてないゾ!

しかし、お絹さんは何で死んじゃったのだろう?よくわかんなかった。おじちゃん、いや、おとっちゃん、渡世の垢を落としてきっと戻って来てやっとくれ!(春子泣く)

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