半兵衛

女生きてます 盛り場渡り鳥の半兵衛のレビュー・感想・評価

3.2
本来の舞台であるはずの新宿芸能社は最初こそいつものとおりメインとして出てくるがいつのまにか脇にやられ、どや街の描写やそこに暮らすヒロインである川崎あかねなどの方にメインが移る。

そして後半はとうとう新宿芸能社や森繁はほとんど登場せず、川崎あかねと引き取った山崎努の娘、浪人生のなべおさみ、藤原釜足といった赤の他人だった人たちがどや街で暮らしていくという森崎好みの展開になる。だが力のさじ加減を明らかに間違えており、個性的すぎる登場人物が暴れまわってカオスな様相になっていき、一応話は山崎努の吃り男と川崎あかねがくっつくということにまとまるものの唐突気味で何故そうなるのか特に描写されない。そしてあまりにも突然なラスト数分の展開。この作品や「喜劇 特出しヒモ天国」など、森崎節は収束を拒否する展開といいロバート・アルトマンを思わせる。

でも森繁の相変わらずのコミカルっぷり、ベッドシーンを見せつけられる藤原釜足と浦辺粂子の罰の悪そうな顔、クールだけどコミカル、人情味あふれる医者という美味しい役どころを飄々と演じる財津一郎など所々で爆笑できるから嫌いになれない。

それから何と言ってもこの映画の最大の功労者は中村メイコ、ヒロインたちのドラマを時には熱く、時にはクールに見つめる姿にはグッとくるものがある。彼女がいなかったら映画はもっと破綻していたはず。
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