とし

レイチェル・カーソンの感性の森のとしのレビュー・感想・評価

3.9
レイチェル・カーソン。科学者としての高潔さと、叙情豊かな文体によって20世紀における最も先見の明がある作家。

カーソンの魅力ある生涯を自ら執筆し、一人劇『センス・オブ・ワンダー』で過去18年間演じてきたカイウラニ・リー。

その劇を映画にしたいと自身で監督、資金を見つけ、ドキュメンタリースタイルで実現。そして、その作品の配給を日本で成し遂げた浅井隆(アップリンク代表)。

強い意思をもった3人によってこの広い地球上で私にも届いた映画。カイウラニ・リーがカーソンの最期の数ヶ月に扮して哲学を語る。一言の無駄もない、まさに自然そのもののようなありがたみ。

"誰でも海のことを誠実に書こうとすれば、詩的になるのです。"

主題が作家を選ぶ。小説においては作家が見つめる素材そのものが語りだす。そうゆっくり話す彼女の瞳は賢者の光を放つ。

"懐中電灯がパスポート。ビザは目覚めた好奇心。ずっと聞こえてはいたけど、耳には届いていなかった虫の声"

"残念なことに、多くの人は大人になるまでに美や感動に対する直感力が鈍ってしまいます。失ってしまう人もいます"

"不思議さに目を見張る感性、センス・オブ・ワンダー。それは倦怠、幻滅や、自然から遠ざかることへの解毒剤になります"

早期から、化学物質が自然や人体にもたらす影響への警鐘を鳴らし続け、環境活動の始まりを生みだしたカーソン。彼女の優しい言葉たちへの裏に、多くの中傷、批判、悲しみを経験してきた強さを感じた。

私は科学的根拠をたくさん持ちながらも、詩的で文学的に、感性でメッセージを放つアーティストに強く心を打たれる。

sense of wonder

なんて愛しい響き。
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