小波norisuke

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男の小波norisukeのレビュー・感想・評価

4.0
いきなり用語解説で始まる。続いて、重要人物らしき人が、次々と殺されていく。何が起きているのか、しばらく理解できない。しかし、それでも平気だ。ソレンティーノ監督作品だもの。簡単にわかるはずがないと、覚悟の上だ。

ストーリーにはちゃんとついていけないが、それでもスタイリッシュで、ゴージャスで、過激な映像美に酔いしれる。様々なジャンルを組み合わせた音楽もかっこいい。実名で実在の人物が登場する、非常に生々しい、血生臭い政治スキャンダルを描いているのに、この美しさは何たることか、と感嘆してしまう。しかも、主人公のアンドレオッテイが猫と対峙する場面など、ユーモアも散りばめられている。

イタリアの政治は、とてつもなく深い闇を抱えていそうだ。政治家と、マフィアと、カトリック教会。「善を成すために悪をも為す」のは、必然なのかと暗澹たる気持ちになる。

それにしても、ご本人がご存命のうちに、よくこんな映画が製作され、公開されるもんだと驚く。私が住んでいる国では、企画自体が実現しないだろう。万が一、製作されたとしても、暗く、醜悪なものになってしまうのではないか。

少しだけでも予習して行けばよかったとも思ったが、イタリア政治について学ぶことができた。ソレンティーノ監督作品は、やはり劇場で見る価値が高いと再確認した。
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