オレンチ

雨に唄えばのオレンチのレビュー・感想・評価

雨に唄えば(1952年製作の映画)
4.5
『この映画が色あせないのは、ダンスが時代を超越しているからだ。』
──ザック・ウードリー。(「グリー」振付師)


ミュージカル映画といえば古くは、「巴里のアメリカ人」「踊る大紐育」「バンド・ワゴン」「ウエストサイド物語」。
少し前だと「シカゴ」や「ムーラン・ルージュ」、「NINE」。
最近だと「ラ・ラ・ランド」や「グレイテスト・ショーマン」といったように、思い浮かべればいくらでも出てくるほど、アメリカ映画とは切っても切れない関係ですね。
そんな数あるミュージカル映画の中で、今でも色あせない傑作の一つが本作、「雨に唄えば」ですね。


というわけで、
字幕版を2回、デビー・レイノルズやドナルド・オコナーやスタンリー・ドーネンといった当時を知るキャスト&スタッフに加え、バズ・ラーマン(ムーラン・ルージュの監督)や映画史研究家のによるオーディオコメンタリーを一回、「現代のダンサー達が語る"雨に唄えば"」という特典を1回鑑賞しました。

本題に入る前に上記でずらずら書いたんですがとにかく本作のコメンタリーが豪華です!特典というより映画史の資料ですねこれ笑
一見の価値ありですよ!

さらに本作の特典も50分というボリュームめ非常に面白かったのでこちらも合わせてオススメです。

あ、がっつり内容に触れていますが、パブリックドメイン的な感じでもういいかなーと思いネタバレにしてません。
ふざけんなネタバレじゃねーか!って人いたらコメント下さい。
即対応します。


さて本題ですが、
本作は全てが高水準ですよね。
ミュージカル映画ということで、歌と踊りはもちろんのこと、サイレントからトーキーへという時代の流れがもたらした悲劇を喜劇として描いた脚本も最高ですよね。
また衣装きらびやかでめちゃくちゃ豊富なんですよね。
雨に唄えばの衣装さんが
「雨に唄えばほど大変な仕事はなかった」
と言っていたそうです。
ぜひ衣装の種類なんかにも注目して見てもらいたいなと思います。

また、本作に出演していた女優さん(発声の先生)が
「こんなに語り継がれる作品になるとは思ってなかった。あの頃はみんなただ楽しい作品を作るために頑張っていた」
とおっしゃってました。
この情熱こそが語り継がれる作品を作るんですよね。

当時から本作に使われている楽曲のほとんどは古い曲だったわけですから、曲を元に脚本を書いていくことになるわけですが、これがめちゃくちゃ大変だったそうで何度もアーサー・フリードに無理ですと言いに行こうと思ったとか笑
「Singin' in the Rain」が発表された年をヒントに、サイレントからトーキーの時代が思いつき、そこからは割とスムーズに脚本が進んだみたいですね。

本作の冒頭で、ドンがいかに輝かしくスター街道を歩んできたか口で説明する一方で、回想では全くそれに当てはまらない事実が映し出されますね。ここでテンポよく本作のルールづけをする手前、素晴らしいなと思います。
つまり本作において、口はあてにならないよっていうことを言っているんですね。
撮影時、サイレントの絵的には愛し合っているかのように見えるのに、声を当ててみると罵りあっていたり、リナが口パクであることにもつながってきますね。

またこの悲劇、当時淘汰された俳優さんがたくさんいたんだろうな〜と思っていたらやはりたくさんいたみたいですね。
中でも、ジョン・ギルバートという俳優さんの話が有名みたいです。まさに本作のリナみたいに声が悪声だったようですね。
またあのチャップリンでさえ、観客のイメージを壊すのでは無いかとしばらくトーキー映画を作ることを渋っていたようですね。
まぁチャップリンはねぇー「独裁者」で人類史上最高の演説を残してますからね。
トーキーでも大成功ですね。

このように裏付けができる事実が根底にあるからこそ本作は色褪せずいつまでも面白いんじゃないかなと思います。
もちろんダンスの素晴らしさもありますが、それは後述します。

こうしてハリウッドの流行りはサイレントからトーキーへ変わり、ミュージカルが爆発的に流行るわけですが、ベトナム戦争が始まると、人々の関心は夢の世界から現実へと向き、アメリカンニューシネマが生まれていくんですよねぇ。
時代の流れはわからないものです。


さて、雨に唄えばといえばやはり歌と踊りですよね。
「Singin' in the Rain」のシーンももちろん捨てがたいですが、僕は個人的に「Good Morning」のシーンが一番好きです。
なんといっても3人のステップが完全にシンクロしてるところが最高ですよね!
ここは3人とも歩幅が違うのでステップを合わせるのが非常に難しいらしく、それを足元を一切見ずにいとも簡単そうにやるからすごいのだそうです。また、いろんな種類のダンスを組み合わせるというかなり高度なこともやっていて、(例えばタップから急にバレエだったり)だからこそいつ見てもダンスが古くならないと現役ダンサーの方がおっしゃってました。
デビー・レイノルズはもともと体操選手ってだけで踊りは素人だったそうです。
その人がここまで踊れるようになるには血も滲む努力があったとか。
文字通りこのシーンは何十回も練習し、デビー・レイノルズの足からは血が出ていたそうな。

そんなデビー・レイノルズも数年前に亡くなり、その娘である我らがレイア・オーガナ姫 AKA キャリー・フィッシャーも亡くなってしまいましたね。

とはいえ、「Singin' in the Rain」のシーンもやはり最高です。
というかこのシーンは至るまでの流れが素晴らしいんですよね。
ドンのトーキー映画は失敗し、恋を寄せてるキャシーは振り向いてもくれず…
ドンは絶望の淵にいます。
そんななか親友のコズモがミュージカル映画にするという名案を思いつきます。
成功を確信したドンに唐突にキャシーのキス…。
絶望の淵から幸せの絶頂へ一気に舞い上がった後にあのシーンですからね。
これ以上あの歌詞に合う運びは無いでしょう。
現役ダンサーの人達が言っていましたが、ジーン・ケリーはかなり難易度が高いダンスを誰にでも出来そうなほど簡単そうに踊るから凄いんだそうです。

さて、ダンスのシーンでもう一つだけ書きたいのですが、それはあの超長いベールを使ったバレエのシーン!
初見の時、なんだこれ、すげぇーーーってなったのを覚えてます。
だってめちゃくちゃ長いベールがまるで生きているみたいじゃないですか。
あんなに勢いよく舞い上がるということは相当な風圧のはずなのに演者は何事もないように立ってるし。
で、やっぱりプロの目から見てもあのシーンはすごいみたいですね。
見てる側から見たら楽しいシーンだけど、振付師やダンサーからしたらあれは悪魔だって言ってましたね笑
実際に演じたシド・チャリシーも飛ばされないように立ってるのが大変だったとコメンタリーの中で言っていました笑
大変だったんだね笑やっぱり笑

それでは最後に僕がグッときたシド・チャリシーの言葉で締めさせていただきます。

「また踊れるならジーン・ケリーと踊りたい。」


最後まで長文・乱文にお付き合い頂きありがとうございました。