Yukenz

父と暮せばのYukenzのレビュー・感想・評価

父と暮せば(2004年製作の映画)
3.7
宮沢りえと原田芳雄のほぼ二人劇で、広島弁による台詞の掛け合いが見もの。井上ひさしの原作だそうで、舞台でも多数演じられているようだ。

父娘のいい関係が全面に出ていて和む。娘に面と向かって「お前の恋の応援団長」と言える父親って素敵だと思う。

しかしながら2人の話の本質は広島に投下された原爆によってもたらされた悲劇であり、時折耳を劈く無機質なピアノ音によって現実に引き戻される。父親の正体も明らかになっていく。

原爆で多くの方の命が奪われたなか、運良く生き延びた自分に対して申し訳ない思いに駆られて幸せになってはいけないと必死に言い聞かせる娘。父親への行動に対して自分を責め続ける姿が痛々しい。

それらを受け止め、優しく、時に熱くなって娘を諭していく父親の面影。

きっと同じような思いを抱いて葛藤に苦しみながら生きてきた方たちもたくさんいたのだろう。

最後、あのイヤな無機質なピアノ音の後に映し出される、原爆ドームの瓦礫に咲く二輪の花の意味とは…?
父娘が寄り添って生きてきた象徴、或いは一度地ならしされても力強く生きていくという未来への希望の象徴と捉えておきたい。

山田洋次の「母と暮せば」が本作の対になる作品のようなので、いつか見てみたい。
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