ヨウ

マイ・マザーのヨウのレビュー・感想・評価

マイ・マザー(2009年製作の映画)
4.0
愛情と憎悪は表裏一体。愛情の正反対は無関心である。

ふとそんな言葉を、思い出した。
愛されたい、憎くてたまらない、この相反するベクトルはいずれも母に執着するから生じるのだと思う。

『17歳、僕は母を殺したー。』

親に抱く幻想、すなわち「親の万能感」を捨て去る事が、この作品のコピーでもある親殺しの意なのだと、鑑賞後に感じた。

『母親への愛は無意識であり、親離れの時、初めてその根の深さを知る』

ユベールが《王国》と呼んでいた、海辺のアトリエで蘇る幼少期の情景。いつまでも握り締めていたいが戻らないあの頃の幸せな時間と、これから自分が向き合っていかなければならない時間が異なる事を悟った時、初めて親離れが出来たのかもしれない。

無意識に執着していたあの完璧な程の幸せな想い出は過ぎ去った時間だと、力いっぱい握り締めていた過去の記憶を優しく手放せたのなら、自分と同様に不完全な母親を認める事もきっと出来る。

改めてこれから母と向き合っていき、新しい関係性を築いていけるんだろう。
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