ヨウ

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>のヨウのレビュー・感想・評価

4.0
人は誰かに必要とされる時、自分の居場所を獲得する。この映画を観る度に、ふとそんな事を思う。

旅行中に夫と別れたジャスミンは、モハべ砂漠の寂れたモーテルへ立ち寄る。女主人のブレンダも余裕のない生活から夫や従業員に声を荒げるばかりで、この一風変わった客を歓迎しない。そんな二人の出会いは、相互理解を通し、やがて掛け替えのないものへと変わる。
西欧の濃い珈琲を熱湯で薄めて飲もうする場面の様に、お互いの文化や価値観の違いを理解する事は難しい。だが歩み寄ろうとする事で状況は好転する。

ジャスミンの手品ショーのおかげで徐々に繁盛していくモーテル。その傍らには供に笑顔で客を迎えるブレンダ。そして客達も心から手品を楽しんでいる。まさに砂漠の中に心を癒やすオアシスが生まれたかの様でもある。ふと気づくと映画を鑑賞している自身の表情も緩んでいる。

登場人物だけでなく、映画を超えて鑑賞者の心をも解きほぐされる事がこの映画の最大の手品(マジック)かもしれない。
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