みずけん

ビートルズ/レット・イット・ビーのみずけんのレビュー・感想・評価

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1970年公開「Let It Be」の4Kリマスター版。ディズニープラスで念願のリリース。

今までは限られた手段でしか視聴が不可能で、
1.80年代に発売されたVHS:著作権的にグレーなブツ。

2.海賊版で流通していた映像:90年代に公式が作成した未発表のリマスター版が流出したもの。

3.各国でのテレビ放送の録画:日本では84年の日テレ再放送版が出回っている。他には西ドイツ版など。

という状況だったので、こうしてきちんとした形でリリースされてファンとしてはホッとした。今まで集めた海賊版とはこれでおさらば。

21年の再編集版「Get Back」ではデジタル的な質感の映像に加工されていたが、本作では撮影時のフィルム素材をダイレクトに起こしたような自然な画質になっており、個人的にはこちらの方が好き。ただ、当時のレンズの性能が微妙なため四隅が流れ気味、ピントも全然合っていない。屋内シーンは16mmで撮影するには明らかに光量不足で、安物ホラーのような絵になってる。

音質は「Get Back」や「Now and Then」と同様の技術が用いられているらしく、音の分離感、迫力共に全く文句なし。これは本当にすごい。


内容としては、あくまでリマスター版なので画質・音質以外はオリジナルとほぼ同じ。冒頭にピータージャクソンとマイケル・リンゼイ・ホッグの対談が付いているだけ。

改めて見てみると、「Get Back」ではそれなりに穏やかな雰囲気でアルバム制作を行っている様子が映し出されていたが、こちらは「解散間際の険悪なバンド」という印象操作が成されている。
また、70年4月のポール・マッカートニーのビートルズ脱退表明の直後にリリースされた映画なので、当時の泥沼解散騒動を焚きつけるような、ある種スキャンダラスな内容になっている。今までリリースを保留していたのも頷ける。
本作は、ビートルズ主演映画5作目にして念願のアカデミー賞を初受賞した作品なわけだが、授賞式にはメンバーは誰も参加しなかったそうな。最近もリンゴ・スターが「こんな映画が再リリースされても別に嬉しくない」と発言したりと、メンバーからしても黒歴史なんだろう。

完全上位互換の「Get Back」がある今、もはやこの映画にあまり存在価値は無く、評価が微妙な作品。ビートルズファンでなければ退屈だし、ファンであっても見ていて辛い。

あと、リリース当時の予告編を模したトレイラーが良かった。当時の予告編のナレーションを流用していたり、演出を再現していたり。ここら辺はさすがディズニーという感じ。芸が細かい。
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