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宗方姉妹のtomひでのレビュー・感想・評価

宗方姉妹(1950年製作の映画)
4.0
久しぶりに「宗方姉妹」を鑑賞。「宗方姉妹」を観るのは2回目。最近観た「晩春」の4Kリマスター版が素晴らしかったので本当はリマスター版で観たかったが、都合が合わず従来版での鑑賞。リマスターされた他の小津作品を観てしまうと流石にこの従来版のフィルムスクラッチ、大きなブレ、妙に暗かったり、暈けていたりという映像は映画への集中を削いでしまうのが少し残念。

=====以下ネタバレあり======

古い考え方の姉(田中絹代)と現代的思考の妹(高峰秀子)の話。考え方は違うが、姉は妹の事をとても思っているし、妹も姉の事を大切に思っている。妹役の高峰秀子の映画を動かしてゆく奔放な演技がとても楽しい。

映画中盤で語られる、姉妹の恋愛を含めた考え方の違い、「新しさと古さ」を話し合うシーンは当時の小津映画と他の日本映画との立ち位置が姉妹それぞれの考え方とリンクしているようでとても面白い。

小津の前作「晩春」は高く評価された素晴らしい作品だが日本家屋からカメラが出ない小津作品に対して、「野良犬」「羅生門」「生きる」と新しい題材にチャレンジしている黒澤との違いを本作のこの姉妹を通して小津が語っているようで面白く観られる。

小津作品でカメラが動く事は殆どない。動く時は電車などの乗り物に乗っている移動だったり、歩いている人物をフォローする為の移動撮影だったりするが、この映画の前半で姉妹がお寺を訪れたシーンでは、二人がフレームから外れたあとカメラが横に移動する珍しいショットがある。人物の動きでカットが変わるアクション繋ぎなども幾度となく見られる。暴力シーン(姉が夫に殴られる)もあり、いわゆる小津っぽくない所が見受けられ「新しさと古さ」の考え方も含めて映画作家としての小津の表現の微細な変化も面白く観られる。「晩春」でキャリアのピークに差し掛かったとも思える小津の遊びなのだろうか?

しかし「晩春」から「東京物語」に向かっていくこの時期の小津作品群ってヤバイな…(笑)

「本当に新しい事は、いつまでたっても古くならない事だと思ってるの」
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