ふぇりな

パーフェクトブルーのふぇりなのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.0
今まで、今敏監督作品は、パプリカ、東京ゴッドファーザーズ、千年女優と観てきましたが、本作はその中でも一番緊張しながら観ました。でもその緊張は最後までほぐれなかったし、気が付けば文字通り「無我夢中で」観ていました。同監督の作品の中で一番好きな作品は東京ゴッドファーザーズなのですが、一番完成度が高いというか、ものすごい作品を観たな…と圧倒されたのは、本作でした。

この作品を観ていると、いろいろなものがごちゃまぜになって、気が狂いそうになります。夢とうつつ。理想と現実。本音と建前。アイドルとファン。偶像崇拝とストーカー。アイドルと女優。無垢と穢れ。男と女。客体化され、消費される心と体。希望と絶望。本物と偽物。美しいものと醜いもの。知らないところで独り歩きする「自分」。「自己」顕示欲、「自己」否定、「自己」肯定感。これらの相反するもの、鏡の中の手の届かないものと、こちらに迫りくる現実…こういったものは、混ざってほしくなくとも、清濁併せ吞むというか、折り合いをつけて生きていくのが人間だと思います。だけれども、それらに飲み込まれてしまい、インターネット黎明期の閉塞感も相まって、追い詰められていく、未麻ちゃん…。

多分、未麻ちゃんは、純真無垢すぎたのかな。とっても優しく、明るく、夢と希望を抱いて、アイドルになった。才能もある彼女が、愛されないわけがない。事実、ルミちゃんとか、CHAMのみんなとか、素敵な人に囲まれていて、自分のことのように心配したり泣いてくれて、幸せ者だよ。私は、貴女が「本物」でも「偽物」でも、どっちでも好きだってことを、伝えたくなりました。

本当はすべて現実じゃないんじゃないかとか、脳内だけの出来事なのかとか、いろんな邪推をしてしまいましたが、DVDに収録されていたインタビューを観たら、割とそのまま受け取っていいようですね。でも、最後のセリフだけは、こちらで受け止めなくちゃいけなそうです。

最後に一言、今監督は天才だと声を大にして言いたいです。死してなお消えない「本物」を、この世に残してくれて、ありがとうございました。
ふぇりな

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