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蛇の道の盆栽のレビュー・感想・評価

蛇の道(1998年製作の映画)
3.9
道徳心の崩壊


 黒沢清監督による残酷な復讐劇。もはや人としてのモラルを失っている問題作ではありますが、一周回って美しさでさえ感じてしまう狂作でもあります。結論、素晴らしい。

 個性的な人物しか登場しない本作は、会話劇としての面白さがあります。シリアスさの中にあるちょっとしたコミカルさ。度が過ぎてクスッとなるシーンもいくつかありました。ですが、拷問シーンは精神的苦痛が観客側にも伴います。香川照之演じる宮下が、殺された娘の死因をリピートしながら話すシーンはそこら辺のホラーより怖い。これが所謂「言葉責め」ってやつか。そこを除いたとしても宮下の言動は常軌を逸してる。彼に対する感情は同情から始まり、いつしか非情へと変わっていきます。

 そしてラストはかなり衝撃的。ただの復讐劇ではない、完璧な復讐劇の姿がそこにはありました。見事に最後まで演じきった哀川翔と香川照之の演者としての底力に気付かされた頃には完全に釘付け状態。本編も85分ということでかなり観やすいのが良点。

 今年、黒沢清監督本人によるセルフリメイク版が公開されるので超期待しちゃいます。

2024.5.9 初鑑賞
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