tak

山の郵便配達のtakのレビュー・感想・評価

山の郵便配達(1999年製作の映画)
4.0
素朴な味わいの家族愛ドラマに心洗われる秀作。80年代という設定だが、山間部の郵便配達には車も自転車さえもない。険しい道や道なき道を幾日もかけて歩くだけ。中国の山間部の棚田や山の緑が目に焼き付いて、どこか懐かしさが漂う。それだけに郵便配達と村人との心の交流がいっそう味わい深い。

父と息子が旅を続けながら絆が深まっていく様は実に感動的。父は息子に対する信頼が生まれ、息子は父親により尊敬の念を抱くことになる。特に息子に背負われて涙する父親の姿にはこっちも泣けた。留守を預かってきた母親を思う息子の台詞とそれを聞く父親の表情、盲目の老婆のエピソード、公務員として働いたのに出世できない父親。都会のシーンや多くの登場人物も出てこないが、映画の随所には今の中国がしっかりと感じ取れる。

また、名犬”次男坊”も印象に残ることだろう。「一人っ子政策」の中国だから”次男坊”なんだろうけど、これが名演技。風に飛ばされた郵便物をジャンプしてキャッチするスローモーションには感動します。

どうでもいいツッコミ。ポケットラジオに茶碗をかぶせて洋楽を聴く場面があった。映画は80年代という設定なんだけど、あの曲はデンマーク出身のバンド、マイケル・ラーンズ・トゥー・ロックの That's Why で90年代初めの楽曲。映画がよけりゃ、気にすることじゃなぁいんです。
tak

tak