TAK44マグナム

ゾンビコップのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ゾンビコップ(1988年製作の映画)
4.3
刑事がゾンビになって、自分を殺した犯人を追うという80年代特有の能天気さも快調な傑作ホラーアクション。

その昔、日曜洋画劇場で頻繁に放送されていた映画ですが、何故か全編通してちゃんと観たことなかったんですね。
で、お安くなったタイミングでブルーレイをポチりまして、寝かしてあったのをようやく鑑賞しましたよ。

お話自体はどうでもいいようなものだし、劇中で使われるトリックも今時「名探偵コナン」でも使わないような代物だったりしますけれど、主人公コンビの調子の良い台詞のやりとりや、実にバカバカしい見どころが満載の楽しい映画なので、何も深く考えないで暇つぶしに観るなら最高のお供といえます。
間違っても主人公たちの行動や思考を真面目に考察したりなんてしようとしちゃいけません。
何故なら、無駄だからです!
考えるな、感じるんだ精神で鑑賞しましょう!

イケメン刑事(という設定)のロジャーは殺されてしまいますが、蘇生装置によって蘇ります。
どういう原理なのか全くわからない装置なんですが、スイッチを入れると電流が流れて、けっこう短時間で生き返ることができたりします。
フランケンシュタインの怪物に出てくる装置のイメージっぽいですね。
「よう!ここは何処だ?」目を開けたロジャー。
見たこともない何だかよく分からない装置なのに一発で使えてしまうのが、まずスゴイ。
蘇生したロジャーは心拍もなければ、手を切っても血も出ません。基本的に死んでますからね。
(でも、何故だか撃たれたりすると血が出ます。ホワイ?)
検視官によると、どうやら12時間ぐらいで細胞が溶けて、今度こそ本当に死んでしまうらしい!
時間が無いので、死体を蘇生させては強盗をやらしている黒幕を急いで捕まえようと捜査を開始するロジャーと相棒のダグ。
まずは製薬会社の美人広報が怪しいとにらむのですが・・・

テンポがびゅんびゅんと気持ち良いですね。
ダレてきそうなタイミングでアクションが挿入されるし、ポンポンとストーリーが進むのでストレスフリーで観られました。
内容は実にくだらないものですが、中華街の肉屋の場面は映画の歴史に残さないわけにはいかない珍場面!
蘇生装置の電流によってチキンやら焼き豚やらが一斉に動き出し、ロジャーたちに襲い掛かる!
あの「バタリアン」よりも更にバカ!
最高にイカした珍場面ですが、いい年こいた大人たちが、こうじゃないああじゃないとチキンをミキサーにぶっこんでミンチにしたりして「キャッキャキャッキャ」と喜んでいるのかと思うと、映画作りって本当に楽しそうだなあ・・・と、しみじみ思いますねえ。
そして、クライマックス付近になるとロジャーの腐敗がすすんで、観れば分かると思いますがモロにターミネーターみたいな雰囲気!
嫌いじゃないなあ・・・というか、完全に好きDEATH!
因みに、後半のロジャーはどことなくコリン・ファレルっぽい・・・・・自己主張の強そうな眉毛の感じとか(苦笑)。

ゾンビとタイトルにあるからには(原題にはゾンビのゾの字もないですが)ゴア描写にも力が入っているに違いないと思っちゃった貴方!
本作のゾンビは人食いモンスターというわけではありませんので、内臓デロデロ~ンとか脳みそドロドロ~ンとかに必要以上に期待してはいけません。
ゾンビメイクはテキトーにユルユルだし。
でも、身体が溶けて崩壊してゆく描写は意外にしっかりしていて、あまりグロリンチョには期待していなかったぶん、儲けものでした。
腕が腐ってとれちゃったり、アピールしたいポイントでは手を抜いていない姿勢に嬉しくなりましたねえ。
どんなにくだらない映画でも、見せたいところには気合いをいれる。うむ、素晴らしい!

こんな映画を撮った監督が誰かといえば、ドルフ・ラングレンがジャパニーズヤクザと戦うアメコミ原作の「パニッシャー」も手掛けたマーク・ゴールドブラッド。
本作に限っては、コンパクトな尺に面白要素をギュっと詰め込んだ手堅い作りで、ジャンル映画のお手本ともいえる手腕を発揮しちゃっていますが、偶然にもジャンル映画の神サマでも憑依したんじゃないですかね。

怪奇映画の大スターであるヴィンセント・プライスや、「アイアンマン3」の監督でも知られるシェーン・ブラック、それに「バトルランナー」に登場するストーカーの一人、サブゼロを演じた元プロレスターのトオル・タナカなどがゲスト出演として顔を見せてくれているのも見逃せません。
特にトオル・タナカが醸し出すインパクトは、ウシの丸焼きゾンビと同じぐらいの圧力でした!

事件が解決しても、「死んでいる」という現実は変えようがない主人公たち。
それでも、しょんぼりした様子なんて微塵もなく。
目的を遂げ、清々しい思いで天へと召されます(真っ白な、そういうイメージ)。

「もし生まれかわれるなら、政治家や小説家なんてゴメンだね」
「じゃあ、何に生まれかわりたいんだ?」
「女の子の乗る自転車のサドルだな!それだったら最高だぜ!」

神々しいほどにバカな台詞で劇終!
頭カラッポで安っぽいけれど、マジでこれ傑作だと思います!!


セル・ブルーレイ(日本語吹替)にて