午前十時の映画祭にて。初見。
実在のボクサー、ジェイク・ラモッタの人生を描く。
ボクシング映画であるが、恐ろしく陰惨。
それはジェイク・ラモッタの人格にある。猜疑心、束縛が強く、粗暴。友人がいないので、いつもマネージャーの弟か妻と一緒にいる。その身内に延々とパワハラをする。この地獄の様な日常と血みどろのボクシングの試合が交互に描かれている。
本作ではボクシングはスポーツでも格闘技でもなく暴力として描かれている。ジェイクが暴力でしかコミニュケーションできない男だからだ。
こんな男が好かれる訳もなく妻も弟も離れていくのだが、終盤留置所にぶちこまれ「なんでだ!なんでだ!」と絶叫しながら壁を殴る様が痛々しい。一人になっても暴力でしか自分を表現できない辛さよ。
『タクシードライバー』『キング・オブ・コメディ』も本作もテーマは同じ、呪われた人生だ。
トラヴィスは妄執、パプキンは夢、ジェイクは暴力。どれもグロテスクな映画で素晴らしい。スコセッシは作家性が強すぎる。