みかんぼうや

めしのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
3.7
成瀬巳喜男作品3作目。これまでに観た「浮雲」、「秋立ちぬ」が、なかなかに捻くれた男女関係を描く作品だったので、本作もそんな作品を期待していたが、こういうストレートな夫婦物の作品も作るのか、というかなり直球な内容だった。

東京から大阪に出てきて暮らすある夫婦のもとにわがままでお転婆な夫の姪っ子がやってくる。夫に女中扱いされて少し不満を感じていた妻は、姪っ子と夫との距離感(男女としての)も気になり始め、自分の心の居場所を失いそうになるが・・・という話。

こう書くと、かなりドロドロとしたシビアな内容に聞こえるが、実際の映画の雰囲気は、小津安二郎的などこか日常的で牧歌的。というのも、本作の主人公にして妻役は、あの小津組の永遠のヒロイン、原節子さん。やはり、彼女が登場する作品に、男女のドロドロした作品はあまり似合わない。監督が原さんのイメージを尊重したのか、彼女が小津的空気を持ち込んだのか分からないが、さほどシビアな内容にならず、結果的には温かい作品として落ち着く。

「浮雲」、「秋立ちぬ」の後に観ると、正直パンチは足りない一方、夫婦物としては安定感のある作品だった。
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