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めしの教授のレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
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少しずつだが、成瀬巳喜男の作品を観続けてきて、その演出の確かさと、味わい。「映画」という空間を堪能する物語と画づくりの妙に終始、没頭した。

これも戦後僅か6年足らず。
の大阪、東京。主に神奈川県の矢向。

描かれているのは一言で言えば「倦怠期の夫婦」なのだが、ここにも想いが足りずどこか空っぽな色男(イケメン)の上原謙がいる。
それなりに女にもモテて仕事もまぁ、そこそこ。
ただどことなく覇気がなく、どことなくスケベだ。
そんな男に惚れてしまって結婚までしたのに、原節子はとにかく表情の全てが「メラメラ」していて絶妙。

そしてそこにとにかく逆撫でしまくる島崎雪子がまたたまらない。

未完で死去した原作者の林芙美子の意図はわからず、ラストは映画独自の創作と、本来は全く逆のラストになるはずだったそうだが、まさに、急展開するため「え?え?」となりつつも、そこにも圧倒的な画面づくりと、縁起のコラボレーションで、50年代の古臭い日本映画であることを忘れるほどのスペクタクル的なカタルシスを生む。

成瀬巳喜男おそるべし。
とにかく上品で、粋で。
何より古さを一切感じさせず、現代にも通じる「男と女」の憂鬱と希望を描いてみせる。
それが何より「映画として」落とし込められていることに、巨匠、成瀬巳喜男への敬意が溢れる。
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