ごろちん

野火のごろちんのレビュー・感想・評価

野火(1959年製作の映画)
3.9
塚本晋也監督のリメイク版『野火』は、悪趣味なほどグロテスク(ちょっと『HAZE』ぽい)な映像で恐怖とインパクトを与え、戦争の惨たらしさを訴えていました。

市川崑監督のオリジナル版『野火』はグロテスクな映像よりも、飢餓から来る極限状態は人をどう変貌させるのか、そんな状況下でも死守すべき倫理とは、という人間の本質を色濃く描いています。

トウモロコシの殻を焼いたときに立ち昇る一条の煙「野火」の下には、原住民が人間らしい生活をしている。飢餓で朦朧とし、死を朧げに意識している中、田村一等兵の目に映った情景が印象的です。

レイテ島での戦死者は約8万人。出兵した兵隊の約97%が戦死し、その死因として餓死の割合も多くを占めたと言われています。劣悪な環境のもと、敵、飢え、病気との戦いはまさに生き地獄。正常な判断なんて出来るわけがない。

内容が内容なので諸手を挙げてオススメは出来ませんが、耐性のある方はぜひ。

戦争の過酷さ、不条理さ、そして極限状況下での人間の尊厳について考えさせられると思います。
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